暗い風 「定稿」
――――アルゼンチン・タンゴの曲詞
一
窓を開ければ 深い夜にふれる
古き水のゆらめき 暗い河
ひとは眠りゆく ふり返りもせずに
哀しき日々 恋のみぎり 想い出の
狂おしき命を 燃やしきったこの部屋
情熱に
今宵ひとりで 寒い風を愛す
涙こらえ 夜の気配 たわむれの
二
くちびるにふれる 凍りついたガラス
指の先にこぼれ落ちる 熱き涙
ひとみの彼方に 青く澄んだ希望
心みちて尽した日々 そればかり
絹のシャツは裏切り 気の遠くなる夜
破り捨てて叫んだ さよならと
眠りについても むしばまれた夢に
なにもかもとどこおる 風さえも
三
風を頼りに 夜を流れていた
光ふるえ わたしの影 失われ
夢を捨てた あの人はいずこ
時は過ぎて ひとり侘し 歳ふりて
鏡とって映した わたしの顔 この部屋
髪は白く やせこけ Rosa pálida
想い
夜はすでに明けても 空は暗い
ずっと気になっていた1980年ころに書いたものを一部訂正した。
[作成時期] 1980