どこかから、遠いどこかから
もっとも近い、うごかない
うごかない はじめから
洛陽に かえれ
洛陽に帰れ と
ふるい詩の一節の中でも
となえていたのだ けれど
ただ、そのような、声のような
ただ、そのような、まとわりつく ような
気配と、かなしみ、触ることのできない
なつかしさ、あきらめ その ような
そのような、そのような
洛陽にむかって あしを
洛陽にむかって きもちを
すでに 父も母も遠く 昔に
旅立っているというのに
すでに 洛陽という
土地となまえは なにも
なにも動かすことはないのに それでも
それでも そのときまでには、
いちど
洛陽に一歩
洛陽に向かって いっぽ
黄河を夢想して、
生まれた街を 夢想して
夢想して 旅をたび