見夢録: 2013年10月29日 鄧小平のとった道

中国という国は、強力な軍事基盤と政治的統制力の上で、経済というおもちゃをもてあそんでいる幼児なのだ。
たしかに、「先富」政策により積み木のような大伽藍は目を瞠るがごとくにそびえたった。だが、「起来」の、底なしの人民の闇、点と線ではない広大な国土と人種、宗教の複雑さを掬い上げることなどとても手に負えないのだ。
そのうえ、激烈な貧富の差、不正、富の独占、西洋的な凄まじい欲望の嵐。このおもちゃは、やはり呪われた道具でもある。「 起来」を果たせず死んだのは犯罪である。
いま中国はこのおもちゃをもてあまし、刹那的な富という飴玉をしゃぶらされたままの嬰児 が、駄々をこねて泣き叫んでいるようなものだ。
そしてふたたび、あまりに巨大な国の、本当に底しれぬ暗黒から、カール・マルクスの予言したあの怪物が蠢きはじめている。
この世界資本主義経済の末期に悪魔のおもちゃに溺れたこの国は、他の国と同じような運命をたどらざるをえない。それは、権力の分断、国土の分割、分裂国家の苦しい道のりのことである。
その先のことを述べるのは、まだ性急にすぎるだろう。とにかく、 鄧小平のとった道は、悪魔にささやかれたあの道であったということだ。