寄稿: 佐藤裕子 「七月の便り」

七月の便り 佐藤裕子

イタドリの根元で風の切れ味を試すカメレオンの舌は蒼い
 悪戯に動機を捏造する日射し断ち割れば脂肪の滑り
滴り鬱金一頭の蝶蝶が潰れる後追い原色の塔を見舞う崩壊
 犇く群れの行動を左右するのはいつも先頭か最後尾
地を這う波柔らかな指を折りながら畳む営み畳まれる営み
 俊足で撒いた塵を払う半裸の兵士廃兵を捕る行止り
額を離れ眩暈滾りに錆浮く鍬形は使い果たされた触角一対
 石段の中途で行進に先を譲る遠国の獣異教徒の素足
曲芸師の御手玉が石となり弾むほど階は長く歌は節を失い
 静まり返る宮殿は妃をひとり坐らせたまま地へ没し
都に民は不在でした密林のポストのブレスを確かめ吐く息
 筆跡をなぞり惑う四つ辻流れを追う川筋驚いた水鳥
命取りを防ぐ標準装備翼竜仕立ての編隊が塞ぐ晴天に障り
 昨日の雨は生臭い滲んだ消印は幾日を経て届く足跡
飛距離は点と点を朦朧と繋ぎ彼の王妃は手繰ろうとしない

(2016.3.13)