闘病の話はやめよう
最後の苦しさと悲しさはかぎりがないから
ぼくには 君との47年間の
愛の激しい暮らしがあったのだ
新宿ピットインのイレブンで出会い
ヒッピーだったふたりは
1971年に 京都をめざして
深夜列車に飛び乗った
もちろん、ラリっていたさ
だからMack the Knifeだったのだ
朝まで歌いつづけてね
ぼくらは自由を求めてスタートしていた
それからの愛の物語には触れない
鏡子と聡という宝物に恵まれたのだから
ぼくの心の中には
ぎっしりと 君との47年間の人生が詰まっている
君はきっと あの空から
ぼくの心の中に入り込み
その一つ一つの人生の時間を解きほぐし
ぼくを慰め、励まし、叱咤するだろう
ああ、眞弓 最愛の妻よ
ふたりだけのあまりに豊かな秘密を
ぼくは心の中に語りつづける
だれも ふたりの愛のことなどわからない
ぼくと君とだけの 愛しい宝物について
弔辞として捧ぐ
2017年8月25日9:31没