幾重にも囲繞されて、いる肉体

認知不能の血にまみれてつぶされ
ひしゃがれた太陽が顔を出す
朝はあおくて

実在しない帰途について、つい
非日常という日常の暮らしでは困る
と死体の夜を人目のつかぬ
ところに埋めてゆったり
睡っている女が日常という
非日常に回帰する

夢が燃えあがる瞬間の思考
には落差がきちがいじみた
壁(ネット)をへだてて輪郭のなさから
子供たちはつぎつぎに 生まれる
力の分離は非日常
を日常化して

織物のローカリティが危険だ
と裸身を燦々とかがやかせないで
世界都市の実質的な退廃
である形にとらわれる
でもなくとらわれる歴史
のきちがいじみた肉体
の享楽、棺に刻まれた
無数の人生を

現代的な非生産性
は繰り返す退廃以外のなにもの
なので 半肉体と半精神の火の匂い
がする一瞬の全宇宙に奇しい
流星が毒々しくなく咲きみだれ

大気圏は海だといいたい 受皿にセクシュアルなふたつ
に割れる乳輪 低温でぐずぐずゆでられ
象形文字、文字卵 知能の失楽
から存在の果実の種がつぎつぎ
おとされる、黄身のなかみが

見上げると風が吹く、一文字に収束
する疾風が凄い 形相で、花を
摘み取っていく、こわれてこわれて

あまりに短い飛翔音 あらゆる事象
と万物のやぶれた背の中心
に錘をくくりつけ、くりかえし

○ネットで幾重にも囲繞されてゐる肉体や哀れ