連載【第084回】: 散文詩による小説: Dance Obscura: dance obscura 3: 〈revelation〉2

 dance obscura 3

 〈revelation〉2
 密林が切り拓かれ、叢も刈りそろえられた土地の中央は、平坦な広場となっていた。その中に、校舎か工場のような建物が並び、白い光の下で灰色の区画を保っていた。誰かが静かに声をあげた。
――ここに導かれているのかもしれない。私たちは突き動かされている。

 ひとつの大きな建物に入ると、その中は講堂のような広さで、褐色の樹木の柱とベージュの木肌をもつ壁材が使われ、小さな窓が穿たれて差し込む光を調整していた。
 乗客の一群は恐る恐るここに足を踏み入れるが、講堂には、磨かれた厚みのある木材で組み立てられた濃い灰色の長細い作業台が何百となく整列していた。そして、それぞれのテーブルを挟んで二組の若い男女が向かい合って佇立している。
 青年たちは両手を頭上にまっすぐ持ち上げ、空から幕を下ろすように、揃えた手のひらを静かに下げる。相手の瞳の奥に思いを伝えようとしてか、魅入られているような表情で。それはある種の儀式なのだろうか、あるいは互いに入り交じるための秘蹟の刹那!
 私たちは生まれ変わるのかもしれない。私はたしかに幼い少年となっていた。

 その新しい土地には数多くの若い男女が対になって、質素な貫頭衣を着て、古代の風の流れる霞んだ空気の中で、灰色の細長い机を挟んで立っている。そこは、いくつもの広場、工場、学校のような場所。質朴な、余剰のもののない世界。支配するものも、命令系統もなく、すべてが等しく均された、霞がたなびくモノトーンの世界。見たところ、男女のペアの群像であるが、その姿の中には同性のペアもいるに違いない。
 人々が出現するときには、挨拶の儀式のように両手を揃えて頭上から下に下げる。消えるときは下の手を頭の上に上げていく。空間を閉じてしまうように。世界からの消失と出現。彼らの姿が実体を持つものではなく、イメージであることはその出現の儀式からもうかがわれる。
 ここは魂とでもいいうるエネルギーの集う場所。世界の始まりなのか終わりなのかが未分明の場所。量子の内部の宇宙から作られる場所。あらゆる思考、情報の源となる、ことばの創生。ここは太古の始まりともいえるし、つねに新しい世界が始まる「場」。(dance obscura 3〈発現〉)