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新聞配達人の投函でめざめる
土の家、水の庭
靴底に鍵をしのばせ
びっこをひく
青い木苺を摘んでから
かたまく細流に達した
その中で硬貨が光っている
テッポウユリの咲いていたあたりは
枯野になっているが
虹がかかって見えた
山々は黄変し、花畑には灰
どこかに噴水でもあるのだろうか
山頂の濡れた展望台に辿り着く
ひと滴の宇宙の全貌――
想像の力が萎れているのだろう
瞼に指をのせて
痛みを除く
雨宿りのための死の翳うすく
白い煙が立っている
凄い形相で
花を摘み取っていった男たちのことが
頭の中によみがえった