連載【第027回】: 散文詩による小説: Dance Obscura: fluctuating fabric 2

 fluctuating fabric 2
 嬰児というのが妥当かどうかはわからないけれど、声の主が操っていた塊は形の定まらない筆記具とでもいったもので、始まりは回転体であるけれど、振り子のように円錐状に振り続けると、中心部からさまざまの色光が長い線分となって発するというものだった。そして、その糸状の光つまり網の目は時間と空間と重力のそれぞれの発生点らしく、それらの交点からさらにけばだったゼンマイのようなヒモ空間をゆらゆらとのばしていくように見えた。
 声の主が言っているのは、それらが帯のように結びつくことによって何かの定まりを作り、何らかの疎通をなすということなのかもしれない。

「ぼくが色の原因であるということはありえない。光に色がつくのは物質を通過するからで、全光が阻害されているからなんだよ。ぼくは光の始まりであるから、色も物質も含んでいる、すべてを含んでいるから何もない」
 たしかに全包含は空虚そのものであり、それは全実体なのである。

 その発生源が筆記具であるというのは、その中心から流れ出している色線が時間の凹凸によってさらに色の違いをもたらし、奥行きのグラデーションに見せているからかもしれない。
 しかし、筆記というのは記録と表現に関わる手段だ。つまり、発生の過程を示すものであり、発生の行為自体なのだ。筆記具は記録と表現行為に結びつき、その立体的な操作は発生と創造の座標を定義するものであり、位相転移の秘密を示す祭祀に結びついているのかもしれない。(ゆらぐ織物)