fluctuating fabric 1
それは、空虚という実体を内包したものなのかしら? 意識が物質過程に関与するということは、そのような見方が必要なのではないか、そしてそれはすでにそれ自体がエネルギーでなければならないとも考えられるわ。
「だとすると、ぼくが必要なのかもしれない」
「ぼくって? どこにぼくっていうきみがいるの?」
「ぼくはいないのだから、だれにも見ることはできないし、ぼくの居場所をいい当てることもできない」
「そんなことはないわ。声のするところにいるに決まっている」
「声は音波だけど、形ではないんだよ。だいたい、ぼくは生まれてもいないんだ」
たしかに、声のするところに何ものもありえないし、声のない方向にすべてが囚われているとも思える。だってわたしは囚われているのよ! 何もない周りから。
そのとき、何かが届くか届かないかの、判定さえつかない境界のあたりで、妙な光の塊が形を変化させながら発光していた。
「ぼくだよ、ぼくがやっているんだ。声だけだと定まるものも定まらないからね」(つづく)