連載【第065回】: 散文詩による小説: Dance Obscura: nightmare II: 〈negative symptom〉2

 nightmare II

 〈negative symptom〉2
 暴力と悪徳にまみれた略奪者と閨閥と豪族がシードとなり、原始宗教というペテンと祭事と搾取が支配の礎となる。富や貴賤や貨幣が生まれたときから詐欺師が横行し、法や国がでっちあげられる。国家とは幸福な家だとされるが、それはでたらめだ。国家はあらゆるものを奪うためにあるのだ。

 国家公安委員会は公正さを必要としていない。盗聴、盗撮、密告、恐喝、詐欺、謀略、買収、饗応、不義密通、監視、スパイ活動などの悪辣な手口を駆使して強引に罪人を拵える。警察権力を用いて不当逮捕、拘束、投獄、拷問、殺人はもとより、懲罰、報復、制裁など、陰惨な暴力を駆使する。罪と罰を定める神などいないし、奴隷の主人を詐称する権力者がそんな権能を持つことは許されないはずなのに。権力の下僕は国家に媚びるあまりに、悪徳と暴力を背景に支配の拡大に邁進する。それが司直の貪欲な勤勉さなのだ。

 民主主義という自縄自縛の政治体制は、どこまでいっても一部支配層のガバナンスでしかない。所詮、代議制であれ、多数決であれ、ただの支配の方策にすぎない。支配されるマイノリティは必ず存在するのだ。制限された自由などという詐欺的なすり替えとともに。
 法律とても、理想を守るものにあらず。正義という詭弁に守られてもいない。法は裁判官という官吏の所管なので、権力の均衡あるいは三権分立どころか、権力の合従連衡、三権の鼎というべき国家権力を支える柱なのだ。横暴な権力と横暴な裁判。法の正義という妄想。連綿とつづく国体の足跡が示すもの。そこには無辜の人民の磔柱だけが際限なく立ち並ぶ。
 裁判所は処刑の地獄門だ。無罪であろうが、有罪であろうが、お構いなしだ。司法の都合で刑罰を与え、闇に閉じ込め、共同墓地に放り込む。皮剥ぎの刑、鋸引き、斬首、絞首刑、銃殺。薬殺。電気椅子。撲殺、殺人、人体実験。大量殺人、ガス室送致。裁判所は国家犯罪に加担している。

 さらに操作と監視はつづく。奴隷化はつづく。自由などない。ラッシイ青年はマレー語で、大航海時代から白人は全知全能の悪魔への道を突き進んだ、と断罪する。少年コサールは、イギリス人は仮面をかぶった悪魔、フランス人は偽物の法衣を纏った猿、アメリカ人は性病にやられた白豚だ、と吐き捨てる。キリスト教の全歴史がそれを物語る。アラビアンナイトの闇は深いのだ。(つづく)