生魂荒らし (実験詩集「浣腸遊び」, 1974)

蛸入道の墓暴き

嵐は左腕から右腕へ吹きぬき脳葉はとろけ地下系図の潰滅を招び爪が赤い髪にへばりついている

 
納骨堂に包囲された聖地は春画を埋め
総合納骨所のビルディングは死の街角
骨は鮮血がへばりつき炎は沼に拡がる
燈明は蜘蛛隠れる欲情にたぎり
生魂との交合を照らす
幾百の如来像が雨に破れた岩屋とテラスで
招き猫をまねる
ぬめる日々に柳の河原を舐める
ぬめる生魂荒らしは
地獄へ没ちない
地獄へ没ちない
茫洋とした地軸を支えているのは
地獄へ没ちない生魂荒らし

御詠歌のうねりは街の北へとねり歩き白装束の祭は地形図を被い天はさみだれ雨足遠くさみだれる破乱さみだれる三途の河原渡し

 
くもり雲の傀儡くぐつは屈み込んだ微笑流し
架橋は擾乱を覚睡し意志は剥かれる
高地の社寺は迷妄の菊花
早咲きの花弁は死の卵
待ちぼうけで街儲ける僧侶を荒らし
黄色い卵の浮游を凝視る低気圧の眼
埋められていく湖は生仏の庵ではない
墓掘り人夫の夜流し歌をまねるな
群生の生魂荒らしはハレルヤを唱え
街から海まで剃り落とし
滴る地獄花を生け落とし
桃源郷は示談に応じた後の話
血は血で
死は死で そして