〈光を横切ること〉横切るということは、光の方向に遡るというただの現実に向かうことではない。また光の方向、つまり影という己れの暗い夜を一瞥することでもない。横切るということは、汎く存在する妄想の世界を実現することである。世界とは普遍的に無数の種類の現実であり、綿密な構成によって細部まで構築されているわけだが、我々の抽出せるのはこれまた部分でありながら、この部分の獲得が普遍的に無限の数を持つ世界のありようを物語っている/
書き手の安易な移動。たとえば書いている言葉に乗り移ること。また使用している器物(思惟、観念、イメージ……)にのりうつること。向こうの側から現実の自分が解剖され、夢見られているという方法。単純な推移。連想法の物語主体へのアナロジー/
〈ヒステリー〉(I)ヒステリーに対する防衛措置として妄想的場面への拒否反応。たとえば夢および神秘体験に対する拒絶、放擲性。(II)抑制的人間の妄想場面への参入。(I)における地図恐怖症、人体解剖図、内臓・精巣・卵巣拒絶、および宇宙論恐怖。耐性、人間存在への不可避的な信頼(つまりアイデンティティのごとき)への逃避。(II)における、定められた危機、能力を越えた妄想場面における自己崩壊。あるいはそれを射程内に置いた冒険主義、自己に対するサディスム、つまりマゾヒスム/
〈妄想場面におけるバランス〉存在のヒステリー。ヒステリーの軸を時間的現在に置くか、未来に置くか(未来とは現実ではないということで過去に含まれる)など、軸の設定に左右される。現存に置く場合は防衛的で安定的であり、それ以外に置くときは攻撃的で構築力を持つが、特に過去に置くときは病的傾向が拡大される。ただ体験していない過去はなんら未来と変わることはない。また現在が過去の連続性であると決めつけると、妄想は創造的な場面から離れて病的様相を深める。病的妄想から逃れて妄想を可能にするには、すべての断面をある特定性へと収斂させないことである。頭脳およびその心理的、精神的受皿は無限定の妄想作用によって容量と容器の変化を促される。〈妄想訓練〉〈妄想馴致〉。バランスをとるためには、ヒステリーの軸を適宜移動させることによって暴発を避ける必要がある/