緑字生ズ 152 (猫の耳と称ばれる)

152

猫の耳と称ばれる
ヒマラヤ杉の下蔭から
玄関プロピレイアに入ると
股間の化粧を終えた少女が
単眼巨人との死闘を演じていた

尖った苦みが走ったので
虫の涌いた布で口を拭うと
折れた蟹の赤い爪
さしだされた花びらを齧る

光る甲、かかとまでの汗
横恋慕ではないが
そむけられた横顔、そのときだけの義眼
少女の付け根の血に、思わず息を

じりじりと燃えつきる踊り
じりじりと燃えつきる踊り
油を絞る畸型の時間……