画家になる少女
――初めての個展で
娘の結婚式, 2104.4.12
水に溶ける
絵の束を抱えた 少女が
ふりはじめた雨足に
逐われている
街の灯が乱反射する時刻
建物の壁に貼りつく人々
おい、ここだ、ここだ
少女の描いた 鋭い曲線が
やはり 刃物のように囁く
おい、ここだ、ここだ
たったいま走り出た
画廊の 余熱が
全身に満たされている
わたしは絵を描くためにのみ
生きているのだ
少女の性急な想いが
雨に濡らすまいと その
細い腕に力を伝える
ひとりの画家が
生まれたのかもしれない
[作成時期]2003/06/05 [改訂] 2015.2