未刊行詩集『strandにおける魔の……』04: 魔の系図

吊るされた星座

おお 夜だ夜だ夜だ

松明が駈ける
収束と大団円
とどこおったそれぞれの王は
うす紫に透きとおる翼を拡げ
土の中心をくつがえし
いま……

II 千里を駈ける眼疾

歴史が
人民の胸奥に腫物をつくる
解剖学者の見解によると
それは欠如の痕跡であると
だが
夜は恰好の喩えをあげる
夜は屍をひとつずつ名指し
年代順に並べると
独特の呪文で
息を吹き返させる
すると
胸奥の腫物が屍どもから脱け出して
異様な人格を形成するのである
夜の解説によれば
それは腫物の誕生であって
人民のほうこそ
腫物の欠如の痕跡であると

謎の歴史とは
眼がその種子を蒔く
見ることこそ誘いの魔