未刊行詩集『strandにおける魔の……』12: 徴候きざし

届きうべくもなく
宛先人死亡

種族を告げる滴よ
その滴の中にもぐりこむ
もぐりこんでは言あげる
たらたらたらと繰り返される
インク壷の燔祭に
部族の夜は
とば口をぬけでて朝となる

麻痺する街
軽快に燃える熱気球
そして鎌首
暁を翔る古代鳥類
ああ この痙攣する胃!

海洋からほとばしる 語の断面図
形象の解体 薬物の跡形もないbluesよ
濃紺の満月が
娘らの肌に滲み込ませる音楽
言葉のイメージのない
ぬかるみの熟睡
まどろむ事件夢もない

脱色された造花
ちぢみあがった舌のミイラ
軽妙な語句のひらひら
この淫らな思考の野を
行方不明の
郵便配達夫が彷徨っている