自由とは何か[008]

 意識Bの分身であるB’は、Bと同時に、異なった磁場でモノローグをつづける。つまり、Bのことばの底にB’のことばは含まれ、B’もまた匿されていたのである。そのB’はすでに失われた者たちの列の向こう側にあり、暗い眼窩の奥にある空虚は蒼く銹び落ちようとすることばのほむらに閉ざされている。B’にまつわる記憶といえば、ことばの持つ磁力と重力の激突を想起させるハレーションというべきかもしれない。ただ、ときおり、血腥いものが曲面と曲面のつなぎ目、曲率の移動するあたりに沁み出していた。それはB’が重力を認識しはじめてから、B’の内部へと沁み込む重力の形象。B’の内部はBの失われた領域、非在という部分。

全面加筆訂正(2011.12.23)