浣腸遊びエネマ・ゲームのための十干 (実験詩集「浣腸遊び」, 1974)

 基本的には一つの混乱であり、その本質は一種の破壊的な錯乱であるようなものについて、私は語りたいと思っている。
 ――バタイユ「エロティシズム」(澁澤龍彦訳)

 

きのえ。死のような不協和音。
翔びあがるのだ。肉体を研磨して、呪いのかわほりの如き、澄み切ったトラムペットの不協和音の空へ。

唸れ、逆巻く、完璧なまでの窪み。

方位。白亜の花畑のよどみに、純黒のおとがい

たこ。ひらめ。ひとめぐりのばね。

きのと。太白の軌道に架かる胆結石。
造花のみだらな、ふりしきる雨。疑い深い灰色の犬の尾のみだれ。いっそう濁った斑点。

〈声〉の流通圏の急速な縮まり

水圧を耐える考察者の明け方、てんてんとあちこちの腐臭の尖ったにがみ。

おもい腹わたをひきずる。あの巨人の緑色の柔毛の撒かれた時、陽は月に、月は陽に、交換されて、つめたい嵐を溜めていた。

ひのえ。労働は罪悪であり、夢が存在する。
日光浴の裸体にくっつく魔の使徒。ひそひそ声で、おまえの肛門の春を売れ、と言う。