穴
私である
私を私有する私は私でない 私を
輝く夜 奇しくも鏡に
塗りこめる
そのとき 私は死体だ
つめたい水を含んだ風が
根に隙間なく生えた 桃色の繊毛を
そよがせる
生きている私の ほんものの死体を
食用する根が
命である
根が伸びて
その穴を穿つと
根が 穴である
根
私ではない
私を私有する私は私である 私を
輝く夜 奇しくも鏡に
塗りこめる
そのとき 私は死体ではない
つめたい水を含んだ風が
胴体に隙間なく生えた 桃色の足を
そよがせる
死んでいる私の ほんものの死体を
食用する虫が
霊である
足が伸びて
その根を穿つと
虫が 根である
虫
虫は虫である あるいは
虫から翔びたつものである
私を私有する 私でないものと私は