未刊行詩集『strandにおける魔の……』06:

どこからともなくというタロットの
褐色に古りた
吹雪の先史時代
棘の尻からもれる
雲の叢
重なる幻影
無愛想な水晶の根底に
ああ 燦然たる虹
その脚部が耀きわたる
(オートバイの風切音
 裂けるホイッスル
 咽喉仏の森 森)
から
女の長い腕が ひゅうるるる

〈静脈ガラスを溶かして〉
汚れた手術台に横たわる嬰児を
ぐしゃりと紐でくくり
〈この インチキの夜!〉
狐のような赤い顎を白衣で防護し
黄色い歯のぞかせ
女の長い腕が注ぐのは
おお 母のものなる月経の

獅子の吼える甲板には龍巻
垂乳マストに黒白リボン
機関室における太陽暦の故障
船体を支える十二の枠組みは跡形もない
それでも 上下左右前後方を見ると
鮫の牙の交錯 眼球の性交が
サザンクロスを造形している