未刊行詩集『strandにおける魔の……』06:

家具など調度品の 装寝具
まんべんなく 霜の降り
バイスィクル
その樹海に 逆さ吊りのピエロ
なべてのものものが混淆し
へだたるものの距離が密接
重層の海は夜の刷毛に舐られ
白銀金箔の繊細な飛沫が
瞬間の内部を伸びる
紙・布・毛毬・あ・あ・泡
建物という柔らかさに
ふんわりおおわれ
眼の塔は
傾いだまま破裂する

鏡の迷路の早熟な心理
テールだ テールランプの
生意気な所有者
密室に違いない夜だが
降りつづけるものものがある

棘の裏 棘の表のほっそりした空洞
すつぽりおさまった蟹の
こぼれ落ちた動悸よ
聳え立つ山々は矩形
棘は広がりはじめ
透明な尖を結ぶ