未刊行詩集『strandにおける魔の……』11: 眼の街

烏が啼く 烏の三角形の嘴から
呪いの花
あかぐろいホウセンカの種が
ささーっとふりそそぐ
じつは
眼線の崖っ淵で砕ける花壇

II 網膜のケバ
薄皮をラッキョウのようにむき
まっ白な熔岩が燃えている(流れている)
だから 魚屋で
生臭い女のひんやりした匂いを嗅いだのだが
フラワー・ショップの
五歳になる女児が ぎろり
あいそ笑いもそこそこに
ここにも おれの
鯖状の肺のブツ並び

眼の穴から盗まれてるんだ!

こまぎれの足のこまぎれ歩行
にぎり飯の中の心臓
ナメクジと膿のように
むしろ
まっ青な肺の両てんびん
鼻骨は眼の穴に根をもつ
三分百円の合鍵屋にたむろする酔っ払い
ネオンが吐く血の泡
赤い地図の切れ端をかきあつめる清掃車

おれの行く先は 高架をとび越えて
ケバだつ雲ににゅっと突き立った私鉄の駅

自動販売機のタバコの舌
厚く固められた骨灰に蔽われた花畑を
獰猛な幻の狼が狙う