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眇の売笑帰に地図をさしだした
市場の隅に
夜の脂がたまっている
彼は旅に出ていて
出立したその朝には
ここまでの道が消えていた
雨が上がると
色の足りない虹がかかる
そのとき眇の女は
変ね 夜だのに
と眩く
祭壇は白い骨で組まれている
乳呑児に舌はない
天蓋には男根がぶら下がる
痩せたリャマが
夜の街をとぼとぼ歩いている
リャマの背の
眇の女の
あてどなく疾走しようという夢
火焙りだ
火焙りだ
人々は喚きたてた
羊皮紙に刻まれた
地図をしまい
地球は停止していると思う
雨が降りはじめ
眇の売笑婦が背を向ける
その白い影に別れを告げる