答: 一概には論じにくい。東アジア地域の経済が飛躍的に発展した時、それぞれに有利な外部的環境があったことは確かである。例えば、戦後に巨額の米ドル援助を受けた、米国の圧力の下で土地改革を実行した、50年代の朝鮮戦争と60年代のベトナム戦争で米国がこれらの国家・地域から軍需を買いつけた、50、60年代から70年代初頭にかけては国際的にまだ保護貿易主義が盛んでなかった、等々である。これらの要素は、確かに東アジア地域の経済発展のために初期資本形成を解決し、経済景気を作り出し、市場を提供した。しかし、突きつめてみるとやはり彼ら本国の内因が決定的な役割を果たしている。
問: 具体的に話をしてくれるか。
答: 先ず第一に、彼らは殆どみな蓄積を重視しており、経済が成長する全過程の中で、そのGNPに占める投資率は平均して25%以上を保っている。資金の投じ先には大きな重点が二つあって、一つは大いに教育を興して人的資源を開発すること、一つは直接産出を増加できる生産性部門に投資することである。一方、衛生・社会保険・労働保険福利・住宅建設など非生産性部門の投資は比率がとても低い。米国の援助が終わった後の日本・台湾の高い蓄積は、主として住民の貯蓄から来ているということは、説明すべきことである。この方面で、節約を唱え、生活福利を解決する際には自分と家庭に頼り社会には頼らないという儒家的倫理は積極的な力を発揮した。二番目に、日本・台湾・韓国等東アジア地域の労働者は、勤勉で、進取の精神に富み、規律を守り、欧米人からは「ワーク・ホリック」だとけなされている。彼らの間では労使の対立が鋭くなく、経営者雇用者双方とも行為を長期化できるということは、注目に値する。こうしたことは、集団関係や他人との協調を重視する儒家文化と大いに関係があると思う。三番目に、東アジア地域が基本的に実行しているのは市場経済で、民間部門の比重は高いが、政府もまた上手に市場の規制を借り、情勢を適度に計らい、合理的な通貨政策・財政政策・収入分配政策を運用して、マクロ経済の調整を行なっている。四番目に、日本・NIES及び東南アジア各国には、高い社会的名声と優秀な才能を持った民間企業家階層が存在する。この企業家階層は企業経営の成功を己れの終生の使命とするが、官界に身を置いて政治権力を追う意志はない。西洋の人々はこの企業家階層を東アジア経済の「命脈」と称している。これら企業家の中には、儒家思想の薫陶を受けた人が少なくない。香港の霍英東、包玉剛、台湾の王永慶、蔡辰男、インドネシアの林紹良、タイの陳弼臣、マレーシアの郭鶴年などがそうである。彼らの伝記を読んで発見したことは、これら企業の精鋭が成功した、より大きな原因は人本主義を基礎とする中国式経営管理を重視した、ということである。企業経営の基点を『論語』とそろばんの上に置いたというのが彼らの名言である。