[資料] 天安門事件: 事件直前の記事等の翻訳[06] (佐丸寛人・訳)[了]

 革命主義批判。現体制は革命という武力の中から生まれ、建国後も革命という有事のやり方で平時に当たった。内側で人々が殴りあい殺しあう文化大革命が発生したのも、現代的法治国家を作れなかったのも当然である。第二派は、中国の革命は不徹底だったというようなことを言い、フランス革命を礼賛するが、革命に恐怖政治・独裁・対外侵略等はつきものである。暴力には反対しないと、平和で安定した国家は作れない。
 相対論(無信仰・無主義)。この世に唯一絶対正しいものなど存在しない。現代大陸の失敗は一つの教条を金科玉条としたことにある。第二派は、(非マルクス主義の)近代西洋思想をマルクス主義と取り替えようとしているようだが、それでは崇拝の対象が変わるだけで、一つの主義を信仰するという基本的構造は同じである。
 西洋中心主義に反対。西洋と東洋の関係は横の関係であって、縦の関係ではない。西洋の物差しで計って東洋を「アジア的」とか「封建的」とか言って非難するのは当たらない。勿論、東洋のものは全部いいとか、昔のものは全部いいという考えも、西洋中心主義を裏返しにしただけで、無意味である。東西古今に拘わらず、必要なものを必要に応じて利用しなければならない。
 反「反伝統」。共産中国成立後、反伝統主義は当局の基本路線となり、それは悪性膨張して文化大革命時の「批林批孔(林彪・孔子批判運動)」や「四旧打破(旧文化破壊運動)」に至った。ところが、大陸人がこのように先祖の墓石を壊しているあいだに、傍らで台湾人・香港人はせっせと新しい家を作っており、今では生活に巨大な格差ができてしまった。似たような文化伝統を持ちしかも革命を経ていない日本や韓国も、繁栄している。同様に、米国・西欧もソ連・東欧より進んでいる。
 五四運動への挑戦。五四運動(1919年を中心に展開された近代主義的な知識人の啓蒙・愛国運動)は、共産党の母胎ということもあって、革命後それに対して疑問を提出することは許されなかったが、その愛国(反帝国主義)面はともかく、啓蒙(反封建主義)面には、近代西洋全面肯定・伝統東洋全面否定など結構単純なところもあった。第二派は、共産党がその後、五四路線から逸脱したと非難しているが、あれから70年たった今日こそ、五四を神聖不可侵の領域から引き出し反省を加えることが必要ではなかろうか。