人形たち
人形が数体
稽古用のバス・ドラムの腹に
沙の涸いた喉笛に
詩人の義眼の中に
玉葱の海に浮かんで
火傷のために
鋭い声をあげている
土の底に月ごとの滴を注ぐため
遥かな青空に噤まれた言葉を与えるため
時という虫に啖わせるために
折れ曲がった手足
むしられて逆立つ金髪
抉られた眸の奥のぜんまい
ぬりたくられた狂えるもの
彼女たちはよみがえる
きまって深更
一瞬の
ありとある家々で
あふれる空気の中で
世界を腐敗させる
峻烈な意志
海に浮かぶ館の
とある部屋の片隅に
かくのごときを記す書物がある
つまり
海の歴史しか持たぬ
あらゆる家々の