ものごころ 佐藤裕子
動揺を露にすることや感情を口に出すことは見苦しいもの
微笑と丁寧な口調で決して落ち着きを失わないこと
そう躾けられても姉妹が棲むのは手入れの行き届いた花園
物を欲しがると云う気持ちが分からず仕舞いの横顔
心優しい人人に囲まれ否と言う必要がなかった何をしても
ぼんやり頷き返すだけで事は足りた何所へ行こうと
奥歯が光っていた時だけアーンして御覧と言ったお父さん
時がそのまま過ぎ行くなら千切れなかったロザリオ
壊れ物は元通り失せ物は枕元一つとして持てない大切な物
教えは奇妙な従順を課し軽蔑の眼で保ったプライド
表の顔と棘が刺さった面の裏他人事だと思えば黙殺無関心
拘束衣だった笑みが高笑いに弾けた途端粉粉の鏡面
重い病は二つ目の望み一番に願う幸いは添えない人のもの
子ども扱いされたままで黒い羊が聖女になる薬草園
おとなが泣くのを見たことがなかった水晶が匣で転がる音
微笑と丁寧な口調で決して落ち着きを失わないこと
そう躾けられても姉妹が棲むのは手入れの行き届いた花園
物を欲しがると云う気持ちが分からず仕舞いの横顔
心優しい人人に囲まれ否と言う必要がなかった何をしても
ぼんやり頷き返すだけで事は足りた何所へ行こうと
奥歯が光っていた時だけアーンして御覧と言ったお父さん
時がそのまま過ぎ行くなら千切れなかったロザリオ
壊れ物は元通り失せ物は枕元一つとして持てない大切な物
教えは奇妙な従順を課し軽蔑の眼で保ったプライド
表の顔と棘が刺さった面の裏他人事だと思えば黙殺無関心
拘束衣だった笑みが高笑いに弾けた途端粉粉の鏡面
重い病は二つ目の望み一番に願う幸いは添えない人のもの
子ども扱いされたままで黒い羊が聖女になる薬草園
おとなが泣くのを見たことがなかった水晶が匣で転がる音
(2017.3.25)