それならば とうに彼の到着は知れわたっているのだから あの最後の圧力に耐えたときに入口を示してくれたに違いない
しかし あそこのみならず全域において未だに何の徴候もないというのは彼を警戒しているからであろうか
確かにあそこが入口なのかも知れない
だが閉ざされた入口は開くことはない
扉はある種の族にとって閉ざすためのものでしかないのだから
エルドレは絶望に充ちた確信に有頂天になる
その確信の絶望に充ちた歓びは聖地ラドルで妹とともに味わった感情と同じである
あのボウの咲き乱れる丘で情事に耽っていたときにその相手が妹だとわかった結果 エルドレはありとある愛の優しい腕から引き剥がされ 神々を呪い ただ激しく憎悪の金色に耀く精液をボウの丘に撒き散らしていたのだ
最愛の女は強い自責と悲しみの念だけで淫売のようにボウのほとんどの恋人たちの間に確執の種を植えつけていったのである
絶え間のない呪いと快楽の絶叫のうちにあの気高い七色の光はたちまち光を失い混濁し暗黒の帳を降してゆく
エルドレは呪いの丘から逃げおおせた唯一人である
悔恨の季節が訪れ 幸福に魅入られているはずの聖地ラドルは初めて乾燥の悲しみに包まれる
ボウの丘はやはり真っ白な綿毛に蔽われて眼光の底知れぬ中枢に吸い込まれてゆく
おお 際限のない不幸と穢れを秘めて 聖地のコアはハデスの王とその三つの頭をもつ犬どもの下に悪徳の巣窟となり 再びあの美しき愛の媾いの丘は瑞々しい潤いに充ちた光り輝く大海原に還ることはなかったのである
エルドレは最愛の妻エレアが妹であると知ったときにこうなることを確信していたのだ
ああ あの優しき乙女が狂気の世界に召しいられたときに 何故ともに狂気と背信と悪徳の快楽へと沈み込まなかったのであろうか
あの流されたどす黒い病の血に充たされた海の底へと