人々は記事をただ見つめるばかりで、それも一様に長いあいだ、穴のあくほど見つめている。しかし、議論する様子も昂奮する様子もなく、夕日の長い光を浴びながら立ちつくしていた。そんな公園を眺めながら、一方で公安関係の白い上着に赤い腕章の男が人混みにまぎれてちらちら見えた。
カメラは回したのか
原木を買い付け
熟成に使用する樽は
残り時間があやしいことも
期するところも
良質のモルトウイスキーは
仕込み水は硬水で、と
声に出してみた そう信じていた
夜の人々の流れを反芻して
ぼうっとした 頭のなかでは
太古の生物たち 夜の生物が
異質の空間なのにするりと
ちがう人生が入りこんで
こちらの存在が侵蝕され
こちらの異物が映し出されて
気恥ずかしさにおののいて
だれが責めを負うのだろうか
だれかが、いるはずなのに