ベルナール・パスケ(散文詩)

 パスケの自白によると、三十五年前の最初の盗みのときからある種の匂いで神経が冒されるようになり、それ以来、かたときもパイプから手をはなせなくなったとされる。さらに三年前のカトリーヌ殺害では、地下からたちのぼる腐肉の匂いが沁みついて、それが幻臭のように精神に取りついているのに気づいたという。「いつのまにか、あの匂いを嗅ぐと胸騒ぎがして、わしは頭が変になるんだ。それで、烟草の煙であの匂いを消そうとしたのさ」老夫婦一家を惨殺したときも、婦人の愛用するシャネルの香水に冒されていたのだった。

 バラの匂いは香水にもなるけれど
 死体の匂いもするのだから

 いつまでも、ベルナール・パスケはそんなシャンソンを口ずさみながら、監獄の中で幻臭に悩まされているという。