唄の唄の唄 (実験詩集「浣腸遊び」, 1974)

底なしの過去 透明な陰唇
ひとことふたことみこと
そのときのぬるぬるした摩擦音は
語を急きあげる語
唄の剥がれゆく弔電に
見ず知らずの者の碧を呼ぶ
と 記されて
影を吐いて
星屑に繋げる
《挙げるトルソの斜孔に
 蛆虫のさらし糸が 激越な
 ことばに溶けながら
 ぶらさがっている宙を
 星座に 鋲打てる》
唄ぶりのかすれ
海底植物に注ぐ
彎曲の墓地の四角い空
貌の転がる呼び水のうすれ
濃密なしわぶき
甲高く 地の底に
吐きおとす

語の撒かれる血の畑作に
屹立しかかった風の
いつのまにか 発熱の
毛根をそよぐ
翔び流れるのは
舌ずれの唾液

ばらばらに殺がれて
時へ向かう時の皮質
渦をわたる眼のふち通って
ひえた下腹の水流