現代中国ポストモダンの旗手たち――新聞の切り抜きから
佐丸寛人
6月4日事件以来、中国はどうしようもない武断統治の国になってしまったが、それまでは、かの国の人文学界はかなり活発な様相を呈していて、本当にこんなことを書いて大丈夫なんだろうか、とこちらが気にしてしまうぐらい革新的な論調が、争鳴していた。それは新聞紙上にも反映され、お陰で、5紙を取っていた私は、滞在中(1987年9月より2年間)随分楽しませてもらった。ある時は感服し、ある時は考えさせられ、ある時は思わずにんまりと笑い、ある時は心配になった。
では、最近の論調について、主観的ながら評論させて頂くと、少なくとも、次の三つに分類できると思う(「何々派」という言い方は今私が便宜的に付けたものである)。
第一派。正統派。保守派。マルクス主義者。中国の過去の文化はすべて悪いものと否定し、1949年の共産革命に至って人々は初めて「解放」されたと見なすもの。
第二派。洋化派。中道派。近代主義者。前近代の伝統を全面否定する点に於いては、第一派と同じ。ただ、革命は表面的なものに過ぎず、過去の「悪影響」はまだ続いていると見なす点が違う。近代欧米を熱烈に称賛するが、「脱亜入欧」の感は否めない。『河殤』に代表される。
第三派。民族派。革新派。ポストモダン主義者。過去は必ずしも悪くなかったが、共産党の登場以来、中国は後退した、と見なす。日本・NIESを高く評価。第一派からは勿論、第二派からも激しく批判され、また恐れられている。
この内、第一派・第二派は我が国でもよく知られていると思うが、第三派はあまり知られていないのではないだろうか。それ故、私が紹介しようと思うのも、この一派である。そこで、もう少し詳しく彼らの思想を見てみることにしよう。
実は、一元的価値観を持つ近代主義(マルクス主義を含む)を乗り越えようという以外、彼らの間に決定的な共通点は見られないのだが、大体次のような特徴があると思う。
現代人自身の責任を問う。鉄の事実として、現代の大陸(中華人民共和国)は後進国である。ならば、現代人、特に政策決定の権力をもつ当局は、己の今までの行為を反省すべきだ。第二派は、現代の遅れの原因は前近代社会の「悪影響」がまだ残っているためと見なすが、そういう思想は、現体制になってから生じた問題を無視するものであり、批判の対象を分散させ、焦点をぼやけさせてしまう。