さなぎ
なつやすみのはじまった日の朝。わたしは食事をすませると二階へあがり。窓をあけはなした勉強部屋でとじこもって。
じいっと。
そとは雲ひとつない青空、とうめいな空。つよい風のひとふきでこわれそうな。たけざいくのむしかごがゆれている。
わたしは窓につられたかごのなかをのぞきこみ。ナイフでとがらせた十二本のいろえんぴつをとりかえ。
めまぐるしく。こまかい線とびみょうないろあいで。しろい画用紙にえがいて。
光にやけた竹かごには。病院うらのやさいばたけで採ってきたあおむしが。きいろいしみのある大根の葉といっしょに。
はじめは大根のみどりの葉やあおみをおびた芹をつんできて。
むしのえさにと。
あげはちょうの幼虫はすぐに蛹化し。やさいくずはむしくいをのこして。みどりいろからひからびたいろになり。
かごの底にくずおれ。
スケッチが十枚をこえると。いびつなかたちのさなぎがむしかごの天井からぶらさがる。
かっしょくの肌をさらして。