魔の満月 i – 2(セント・ピーターに在留を……)

幾何学的なこれら巨大結晶 巨大暗号 巨大建造物群 巨大人造湖 巨人像 巨大墳墓 巨大性器 巨大嬰児は燦く御影石の屹立する破片である
赤褐色のごつごつした断層を剥き出して滝のような砂の細流が濛々と飛沫をあげているのをはじめにして 中途で括れている大きな岩の塊や中空に浮かんでそれ自身で大架橋をなしている巨岩 さらに誇らしく天の中心を突き上げる数十メートルの直立する巌や 波のように無数に拡がる純白の石膏砂丘を一望させて視界を凌駕する丘陵こそは素晴しく神秘に充ちた天然の大庭園である
ポリフノエ・ゼムレジェリエは永遠の都から一千万セスタースの黄金を吸い上げ その中枢である大オアシスには幾種類もの樹木が豊かな水に祝福されて世界のありとある果物をたわわに実らせ 鮮血のように美事な夕焼けが棘と毒のある植物の華麗な花の乱舞を染め上げている
おお壮大な無機物の塩辛い砂の海原に浮かぶ夢の苑
だが蜃気楼は最も獰猛な囮である
そのような銀幕が干上がってゆくと エルドレを囲む地面は枯れかかった金雀枝の絨毯になる
汗を感じる余裕もなく急激に水分を奪われてゆく神殿址では 司祭たちのうねるような低い祈祷が幻の中に新たなる幻を生み出している
七人の司祭たちは自らの術によって巌のような整然とした永劫の形に化身する
エルドレを制した屈強の衛士は青銅の自動人形のように緋色の帳の両側で槍を捧げたまま硬直している
灌木の茂みも一塵の砂に帰している
不動の静寂を背景にして ただ祭壇に赤々と燃え上がる炎だけが一切の生命の収束点であるかのようだ

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