〈火〉の装飾性について (実験詩集「浣腸遊び」, 1974)

アポロンの島全体が
蝕まれている
腐敗の炎に包まれて
彼岸へ昇る橋の 暗い下部
そこには 審判を待つ
死たちの 時間と
なによりも 炎の浸蝕をうけて
いわば 魂の持つ腐臭というものが
明らさまに示されていた

橋は まさしく
朽ちかけていた
巨大な腔腸動物の毛細管から
移住した 羽蟻の姿をかりた
悪霊のおびただしい野望によって
橋桁は だから
ほとんど 喪失している
ところどころに 昇りきれない
死が
ひっかかっているのが
確められる

死は
重さによって選別される
硫黄の霧の中で
天秤が揺れている
死は もはや
翔びたてなければ
橋を渡りきることが
不可能だ