孤島 (実験詩集「浣腸遊び」, 1974)

空澄からすみへ汽笛吠う夜 夜の
凍てぬく旋律地図の
軌道に外れる暗黒物質を
漂え

朝を抱きとめたままの 海の
投身 しぶくのは忘却の捨身
 呼び笛に余生を注いだ
 吹き抜かれて翔ぶ
 こぼれるままわきだそう 朝を
抱きとめる 海の
あけ雫――
眼帯をあてて 岩棚の剥ぐ
瞠目の裸体に 太陽を透く
破れ葉の炎げる砂よ実崩れ
  ――厚い光の断層。
崖の尖端に括る 鳥の
開かれた屍体 白い
唄が聞こえてくる
  ――黄金色の眼球のなめし。
海の 全貌さえ
朱の斜線に染まる
もう V字に切れこむ夜の朝――

 照明弾が すうと
 海面をかすり
 遠い幕引き 爽やかな
 顔の溝に埋まる 断末
 底びかる砂の残像から
 融け出す 逃げ舟
 毛一筋で ひかり苔
 どこにゆくのか
 月への通気孔
  ――もう停まらぬのか