孤島 (実験詩集「浣腸遊び」, 1974)

羽毛のそそる 永劫の白夜
無数の空洞から墜とす 水平線
乾いた水音の 昂い動悸
方舟にわく蛆 そのうちに
島全体の鉛を呑みこむような
熱い隆起 白い嵐の呑みこみ
大きく震動する 島の
中央の小高い塚から 娘の
うすもも色の肉を剥き出し 緋の
呪文を 空中に飛散
――宇宙は、縦割れ、蒼白に抜ける。そのあとに、光が粉々に砕かれた、跡吹き……。

島全体が 鳶のような
朱線を吐いて 空を絡めとる
島に無数の洞窟を結ぶ 娘の
はぜた股間から 半透明の
ひょろながい舌の 這い出て
むしろ 星をめざして
喘いでいる
言葉撞きの怪音波ともいえる
島は だが
斑らな群小の漂流の渦に
吸いこまれ
あぶく島の死体であった
――そのあたり、群れなす、うす赤の浮游魂……。