春の街だよ (実験詩集「浣腸遊び」, 1974)


                墓石化
                宇宙底
              蟲こぼし
              残り夢
        下肢をガラス嵌め
          首吊りの欅
       街道沿いの水柱
死の不安な寝顔を
ビーム旋律の激越な波頭で刈りとってゆくと
そこは熱狂のガス焔の赤道地帯であるゆえに
緋の衣裳で翔破する光圏の反重力盤をよびこ
んで綿津見の蒸発地図を叩きあげるのか!
おお 春の街だよ 火の死亡時 または き
まぐれな軌道衛星の解毒剤よ
首吊りのブランコの 眼 毛 を れ !
風そそる長距離電話  の 闇 巡 よ
高速道路を海漬ける   真 体 眠
手のこんだアリバイ    性 か
星の白光を証明にて     死
菫色の霧笛を垂絹る
火の仮性水死か昼か
または手折れ薔薇か 白 の 音 て
落雷の記憶亡失から  光 子 に
呟きの眼底に這える   純 憎
水の仮性焼死か括り    生

粉末の銀河・枯れ肌の王
被写体の崩れ声      おお
電車の     春の街だよ  おお!
厳格な死亡通知      おお
鳩の黝んだ日蝕・突き夢