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地表すれすれで棲息しているのは私ばかりではない。蛇のように低い吐息を這わせているおまえたち、闇の匂いを蓄積させた路地の、地べたの種族――。
おまえたちは蹲っているような沈潜の仕方で、地面に沿って平たくのびきってしまっている。実際、おまえたちはすべての存在と同様に個々の曲率に支配されて、それゆえに永遠の平面にまでのびきっているはずなのだ。
むっくりと体を起こしているのは、やはり影の部分。その影の奥のつらなりの影の内部というものにその根はあるのだろう。根があるというよりも、その存在は裏返された形のままの空虚であるに違いない。影の中の影の部分も体をもたげ始めた。影のつらなりのすべてが、永遠の鏡像のすべてのつらなりが、同じ傾きをもったまま、ゆらゆらと体をもたげ始めている。
私はおまえたちにとらえどころのない類縁性を感じている。それは、おまえたちのいずれかの特質に、かつて私の何かが関わっていたことがあるということなのだ。私は、すでに私ではない別の私の系譜を思い描いているのかもしれない。それとも、いまだその呪縛と密接に関わっているとでもいうのか。
私は自分の生まれた場所を知らない。そのことと関係があるのかもしれない。地面への思い入れ、裸足で土に触れることのやすらぎ。根を下ろし、体を支える根拠がほしいのだ。そして、地べたにはたしかに母の匂いと父の匂いが相まって情緒的な風がそよいでいる。ただ、それだけだ。しかし、私は連鎖だということを思い知らされる。連鎖への懐かしさが甦るとはいったいどういうことだ。それはゲノムに対する降伏の白旗なのか。懐かしさは弱さなのか、それとも諦めなのか。ひとりでいることの寂しさ、地面に抱かれることの救いがたさ。なんという裏切り。
おまえたちは私を呪縛する。しかし、私はその呪縛が私に属しているのか、私を属しているものに関係しているのかを知る術がない。懐かしい匂い、体の奥が引きずられるようないとおしさ、脂にまみれた感触、体をくるむ体毛の記憶、何も考えることのない安逸さ、身をゆだねることの持続――。
おまえたちは答えない。答えることを退けているのではなく、答える必要のない持続があるばかりだ。私はただおまえたちを通して、呼びさまされる何かを感じている。それが何であるかは別にして。それはそれぞれの内部に根強くあるものではなく、表層のありように起源するものなのかもしれない。なぜなら、つらなる無限の鎖はそれぞれの磁場を形成し、それらの磁力によって影響しあっているはずだからだ。