――天澤退二郎氏に
唄の剥がれてゆく
濡れ道に伸びる舌
澱みの星に 胸元あけて
白い首から発酵する
混声の空あげ
歯ならびの底うすく浮く
声垂らし 金箔の語のつづれ
舌根のひえた紫泡に
のみこまれてゆく 染紅の残響
移しの陰曲を
空洞の日なたに重ね
木蓮の劇しい山脈かすかに
しぶき しぶき 発声のうらがえり
乳白の盤 飛びこみ宇宙
その彼方 歪んだ雲へ
たそがれ浴びる
眼底の語の襞 ああ吸われ
葉脈の精汁を滴れる
尖角の舵一匹
こもる湿地の崩れ音
耳管にくるめる霧の粒
呑みこんでゆくひまさえみつけて
♪鬼の目おちて
冥土の唄にひえびえと
ああア お腹の首の声
鬼の目七つ
星珠ころげひえびえと
お腹の お腹の 首の声
唄は剥がれて喉咽を埋める
こまかな海の切端に
稀薄なイリュージョンの色褪せて