聖地ラドルの高敞な景観 なによりも至るところを妖艶な気配で充たす七色の叢 それに没薬に浸されたかのような芳香漲る空気
そして典雅な旋律を奏でる清洌な微風
だが甘美な祝福に包まれた建物の中になんという不吉な呪いが蔵われているのだろう
“……神々の理によれば在位中の王の胤裔が栄光ある宮殿で晨暉を迎えたとき 永えの繁華を約束されていた都に恐ろしい不幸が見舞うであろう ボウの豊沃な生命は失われ黄金時代が瞬くうちに鉄の時代へと転変する なぜならばそのとき神々の御世は……”
ラドルの王位は世襲を宗とはしない
神々との取り決めに準じ ボウが二度蘇るごとに催される大祭典の競技会で四度連続して勝利の月桂冠を戴くつわものを後継者とする
王位継承者はラドル第一の美人にして最高の巫女である王妃を王との共有の配偶者として娶り 即位するまでの期間を王の良き息子として振る舞い 王に与えられた快楽をともに頒たれる
王妃は義子を第三の夫とする
なぜならば王妃は神々の正妻であり 彼女を通じて王は神々の恩恵に浴し 後継者は神々と王との恩恵と歴史に
ラドルの民はこれを王家の三位一体と称す
ああエレーア
最愛の恋人よ
ナクソスの市民ティサンドロスのように 晴々しい誇りと昂る希望に充ちて四度にわたる勇猛のあの苦い杯を戴くことがなかったならば
胸はり裂けんばかりの非情な宿運の鏃に突かれ エルドレは熱病のごとき出産の悪夢から這い上がる
純白の雪が平らな野を蔽う
アルカディアの地に踊る獣神のように
舞台装置は降雪を止め 頭上に真っ青な空を映じる
骸骨の踊りと名称けられた無垢な雪原はいま燦々と輝き迸る一条の真紅の帯によって二分される