魔の満月 ii – 1(世界創造説コズモガニーの窈窕な……)

あの古代の港
アテーナの像を奉じた大祭壇と二十万巻の蔵書を誇る図書館 なによりも黄や淡紅色の可憐な花パピルス草の短い茎を羊の背に植え文明の爛熟を謳歌した都
部屋の四隅に白木造りの吊棚がある
そこに鋭い輪郭をもつ灰色のミニアス陶器や格子文棘文の上に純白の花飾りを咲かせたクラテルが並ぶ
清楚なコンソールテーブルの上に双耳杯や家鴨あひるを擬した水晶の水差しが置かれている
エルドレは甲板に戻ると 海洋との長い交渉で赤く腐蝕している錨を引き揚げる
するとどのような力が作用したのだろう
三層の櫂が勢いよく海面を叩き 舷窓から船乗りたちの歌が溢れ 白い帆は風を一杯にため込み 素晴しい船足でこの船を運ぶのである