小品 (実験詩集「浣腸遊び」, 1974)

 雷鳥
血を分けた兄弟 から電報が胸に差し
込まれる ふと思いあぐねて 見
知らぬ住宅地でわけもわからず 振り
返っている電信柱が 地響き をたて
て闇に発射される それから小踊りして
眼と眼が合う兄弟が知らぬ素振りで散歩道を
駈け抜ける
笑い声が異常な事態に面して空全体に
映し出される 肉親を殺害した男は緋色のマ
ントを小気味よく覆えして
街路樹の中を透き通っていく