雑体:00300 : 自由なるかなはるかなり

 
 
 
負けてばかりはゐないさ 雨に打たれて 宇宙軸の滑落
 
女の体を右腕に抱いてゐるのに 頭脳のはたらきは宇宙の中枢に向いてゐた
 
夢の中に(真実の)睡りを知り 青年のたてがみはふるへる
 
心の奥にある深い穴に女の死体をぶら下げる
 
天鵞絨の翳りを帯びた情欲の(吐息の)青さ
 
眩ゆい海 凍てつく硬い液 双児座の器
 
 
 
白痴的なるアダム 窓櫺さうれいの中の目前
 
生涯に二度とありえぬはげしい息 花なるかな
 
春の得体の知れぬ腕よ抱け 腰だけの女
 
猫の耳といふ銀色のヒマラヤ杉の葉叢 散乱する下着
 
 
 
水を洗ふ 流れたる血のはかなさよ
 
清き水 水をあらはゞ寒椿
 
水を洗ふ掌の中の絶対零度
 
水にひそむ水の心に滲む血の