負けてばかりはゐないさ 雨に打たれて 宇宙軸の滑落
女の体を右腕に抱いてゐるのに 頭脳のはたらきは宇宙の中枢に向いてゐた
夢の中に(真実の)睡りを知り 青年のたてがみはふるへる
心の奥にある深い穴に女の死体をぶら下げる
天鵞絨の翳りを帯びた情欲の(吐息の)青さ
眩ゆい海 凍てつく硬い液 双児座の器
白痴的なるアダム
生涯に二度とありえぬはげしい息 花なるかな
春の得体の知れぬ腕よ抱け 腰だけの女
猫の耳といふ銀色のヒマラヤ杉の葉叢 散乱する下着
水を洗ふ 流れたる血のはかなさよ
清き水 水をあらはゞ寒椿
水を洗ふ掌の中の絶対零度
水にひそむ水の心に滲む血の