雑体:00300 : 自由なるかなはるかなり

 
 
 
船乗りの刺青 たとふべきかな娘たちの春
 
風のやうに 軽やかに渡る ふくよかな土地の魂
 
両性具有の街の屋根の突端の鬼瓦
 
不気味が恋しもののけもものかは春霞
 
古くて不吉で不浄なここのこの文明のふしだらな
 
 
 
三月 乳房に静脈を泛べるをんなたち
 
掌の皺を見つめること数刻 春雷あり
 
白骨の絡まるごとき想像の枝々
 
呼鈴と三半規管 どの女も女だ
 
心を鎖す 内臓と宇宙とのなんといふ一致
 
耳を澄して礼を失せり 邑人の羽がかすむ
 
くすしき流星 地につかぬはたれの足ぞ
 
 
 
脂ぎる少女たち 腰などは臀部 光が粉を吹いてゐる
 
たれの声を愛するか 冷えた硬い液の
 
尖つた滴 つらなる速度 ゆがむあぎと
 
こだはりとかたよりは外道なり