船乗りの刺青 たとふべきかな娘たちの春
風のやうに 軽やかに渡る ふくよかな土地の魂
両性具有の街の屋根の突端の鬼瓦
不気味が恋しもののけもものかは春霞
古くて不吉で不浄なここのこの文明のふしだらな
三月 乳房に静脈を泛べるをんなたち
掌の皺を見つめること数刻 春雷あり
白骨の絡まるごとき想像の枝々
呼鈴と三半規管 どの女も女だ
心を鎖す 内臓と宇宙とのなんといふ一致
耳を澄して礼を失せり 邑人の羽がかすむ
脂ぎる少女たち 腰などは臀部 光が粉を吹いてゐる
たれの声を愛するか 冷えた硬い液の
尖つた滴 つらなる速度 ゆがむあぎと
こだはりとかたよりは外道なり