ネガのように透明な男色家。雪の後に生まれかわるふりをして、自然公園の猿は投身自殺する。芝生のかわりには、鋭い岩が。
歪んだ空のへりをめくると、棘ばかり。
貌の痕。低い低い殺し声。あたかも季節がはずれていく関節の痛み。調教師の手による動物日記。
射程距離。暴走する憤怒が梯子づたいに逃げまどう、夕餉のまどろみ。よく冠状波紋のできる、どろりとした液。
同心円の鳥どもが一目散に転がる。
命名者は、ひっそりへばりつく、布地のような植物群に。焼け爛れる砂地に。
予感にあふれる群青の波。火素を貯える木枯しが、まるで大車輪のように大陸を一蹴すると、手持ちぶさたの紙片が埋められてゆく。
いびつな乳房。よそみをしているとその事情が、そのままによそごとのものになるほかはないので。
蝕み。復活の前夜、町には白い布を纏った老婆が何千何万となくあふれでて、その手には張型が握られているではないか。
蜜。天井裏の一角に、高名な学者が開かずの間を造る。広間には二十六文字のそれぞれの絵本が乱雑におかれている。
樹々を縫って通り過ぎる亡霊。
数億年の眼。
一瞬の朝。
虚ろに向いた地底の、あふれる空のへりをめくると、棘ばかりの流れる河がある。
選別。ひとつづきの下水管に恋人を流した男が、強力な下剤をともに呑み込む。はつかねずみが毛虱を掻きだし。
寝室に、にぶく。腹がめくれる。水桶が膨れる。裏庭に洞窟が隠されているとする。電信柱には骨盤が架かっている。
火山弾。尖端が水分の豊富な果実。住宅街にうろつく分裂病者。気象観測用の人形が林の中で燃えおちている。
めくるめく、即興曲、画布、扉。
押し寄せる血の激しい匂い、春のあとどりへ向けて。
帽子。焔が多重構造の鏡の中で燃え尽きる。
灰皿の上にうずたかい毛の夜。北半球の最大の謎とは何か。
しぐさ。机の方角が決定する。浴場での宴は吟遊詩人の稼ぎどころにもならず、もし無数の不吉が示されれば。
複数の船員。雨が、雪が、桜が、雲が、星の微粒状の夜が、絶え間ない屈伸運動、紐の河がうらがえりながら、甲高い。