魔の満月 第二部(習作)
渦紋
首を絞めつける妖気が円形の数枚の花びらを放射し 右方に滴る青い呼吸器にふりかかる火山弾と ひらひら肉質の薄膜が音もなく明るみを閉ざす 緩慢な海を分けて 病的な蒸気機関車が左旋回する軌道沿いに 明方の彼方とともに 加速する 寝室ににぶく 影の遊離体が 滲みでてはいる 歯跡を浮かべるいぴつな乳房 めくるめく即興曲に交わる線分 画布を司る窓枠の中央から 拡がる冬景色 だがひとたび扉を放つならば 押し寄せる血の 激しい匂い 春のあとどりへ向けて このとき炎症を起こしている 銅貨を宙へ嵌ませ ずぶ濡れの帽子に返す そのしぐさに見とれている複数の船員 その脚すべてに活火山の錘りを括り ネガのように透明な複数の男色家 晴れあがる異国の丘に 光を迸らせる 同国人の彫刻 反転をくりかえしながら転がる反転のくだり 蝕みの厚い水の分子が 脂を浮かべている 硝煙が中心からうっすら消え込んで 同心円の鳥どもが一目散に 挑発する