(こわれゆくもののかたちシリーズ)しもばしら

 窓のそとではしきりに粉雪がふり。
 こんな夜は寒さがいっそうきびしく。冷気があしもとから重いしょうげきをともなって。心臓にたどりつくといわれ。
 風に吹かれてとぎれることのない雪が。部屋のあかりをあいまいなりんかくでうけとめ。
 それが闇からえぐられ、しろい紡錘形がちゅうづりにされて。
 吹きおろす風のために渦をまきながら。
 光の投影された雪のくうかんは、別世界への入口をおもわせる。あやふやなかがやきをおびて。

 わたしは窓にうがったちいさな穴から。その光景をみつめ。片目を穴にあてがい、望遠鏡をのぞくかっこうで。
 雪の吹きみだれるのをながめてなどいない。氷の浮彫細工レリーフにできた、しずくのかたちの穴から身をはなし。その位置から両目の焦点をしずくの穴にむすんで。

 腺病質で、ふだんからあおじろいといわれ。
 そのほおに血のけがさし。あおみのかかったひとみが細められ、ひとみのおくでしろい光がつよまって。
 ガラスの窓にあいたちいさな穴のむこうに、気をひかれるなにかをみつけていたのだろうか。
 そのかおがわずか、ゆがんで。ゆがみのなかからえみがこぼれて。ほそいくちびるのあいだから、あかい舌をのぞかせ。ほおの色が紅潮し。
 にぎりしめたこぶしの細いゆびが、ふるえ。ひらかれ。