見夢録: 2008年08月04日 見夢録について
以前の作物に「見夢録」という散文詩があるが、発句が「マミ夢メモ」で始まるもので、 … 続きを読む
以前の作物に「見夢録」という散文詩があるが、発句が「マミ夢メモ」で始まるもので、 … 続きを読む
病院の待合ロビーで思いついて書きとめたことがあるので、まとめておく。 それは … 続きを読む
私のホームページに以下の紹介をしたので、ここに記録しておく。 ○11月16日: … 続きを読む
○昨年晩秋に北見市、帯広市を旅し、若いときからの友人で永年演劇活動を続けていた故 … 続きを読む
少し前、昔いささか交流のあった俳人・加藤郁乎氏が物故されていたことを知ることを得 … 続きを読む
○詩人・金石稔氏から注目の季刊詩誌「阿吽」第9号が届きました。今号も大冊、23人 … 続きを読む
しばらく、いろいろあってサイトを開店休業の状態にしてあったのだが、あまりほうって … 続きを読む
○さっそく連日の作品追加。「動的作品行為」に公開した。しかし、旅行したり、入院し … 続きを読む
見たこともなかった その場所の してみること ふるい街並みの おくの光の中 母親 … 続きを読む
どこかから、遠いどこかから もっとも近い、うごかない うごかない はじめから 洛 … 続きを読む
緑字斎の原稿――ブログの公開 書斎を開設しました。 旅行していても、入院していて … 続きを読む
だれもやったことがないのに なぜ道づれがいるのか だれの こおりつく場(fiel … 続きを読む
私のWEBサイトはNTTのレンタルサーバーに存在している。 サイトのほかに、Wo … 続きを読む
うしは つくしくはないか うしのかわ たいこのかわ ながされる ぶたのかおで ぞ … 続きを読む
それでも一歩、ちかづく ――E-mailをもとにした構成詩 風がとまったとき … 続きを読む
その硬い刃先が 直線的にすべる 音の波動が カットグラスをきり裂き 削ってとぎす … 続きを読む
このところ、仕事の手が少し空いたので、作品制作に没頭している。 ブログの構築など … 続きを読む
この祈祷書にままみえる 上代のあああうるわしいとも デスタンス 時間ともどもに … 続きを読む
急遽思い立って、上海に10日ほどこもるがごとく引きこもろうとするもくろみを、わず … 続きを読む
ほそくほそく深い声 声ばかり 静謐にしてしてね ね 激しいうねねりもうねりと ひ … 続きを読む
前2者はまるで繋がらない、Google検索は中国管理のものに切り替わる。 噂で知 … 続きを読む
糸球体への沈着が 証明さされずとも 肉芽腫性病変が 線状のの 沈着がどうなろうと … 続きを読む
痛みを感じない 血管は(する) 多少の運動で 壊れたり しない(のか ほんとうに … 続きを読む
上海での作品行為はとりあえず順調に進んでいる。 だいたい昼間の下準備をしてから、 … 続きを読む
地磁気の影響だったのか 大きなへだたりが わきたつうみのそこそこ 波のしぶきに … 続きを読む
唇を指でさする ( )の女性観 自由でないから 不幸なのか 不幸だから 自由でな … 続きを読む
交替を待ってて 心停止の 鼓動の残響はひき つつづき 言葉をかけたり 触れること … 続きを読む
化石ではない現存の 哲学的な 思想家 行動者で つよくつよく 壊れかけた椅子 割 … 続きを読む
上海にいて、書き込みなど規制されているのでここから。 毎日新聞で「中国:天安門前 … 続きを読む
お察しのように、上海発の記事になるので帰国後に公開します。
中国という国は、強力な軍事基盤と政治的統制力の上で、経済というおもちゃをもてあそ … 続きを読む
すごいなあ。 上海空港でアクセスした途端、スピードも高速になり、「天安門」などの … 続きを読む
(Salò 1) 意図的なつくりものをと 欲望は代替物なののかと示して 椅子を要 … 続きを読む
上海から帰ってから4日になるが、投稿が少し間遠になったようだ。 向こうでの滞在末 … 続きを読む
歴史がなないと 単純なのか 世界の問題なら 人工的な国家かとか 国家と人種を越え … 続きを読む
メニューの豊富化のために、旧作からではあるが、小説の公開も始めようと思う。 また … 続きを読む
太陽が毒をふり撒いていた。 海岸道路に沿って建てられていたレストランの二階か … 続きを読む
1 私は私の属しているものを知ることはできない。また、私が属しているとされるも … 続きを読む
2 あなたは私に属しているのか? 私がそのような疑問を抱いてから数日たった夜の … 続きを読む
3 私から最も遠いところから、その痛みは伝わってきたのかもしれない。それとも、 … 続きを読む
(少年期の) 木造の教室の柱と梁が くの字にになり 数日にわたたりて揺れつづけ … 続きを読む
ここのところ、長篇詩を書き続けていたが、この数日は左メニューが気に食わなくてい … 続きを読む
だれでもわかるるものか (編集)の占める位置など ストーリーも自然で 謎めいたと … 続きを読む
4 ――わたしが囚われているのではないことを、あなたが示すことができるのだろう … 続きを読む
うわきぐせのたために フェリーニの (退嬰的な)横溢するるせいが 直線、矩形は … 続きを読む
5 それは、ある青みを帯びた灰色の夕刻。その灰色の濃霧の向こうに薄黄色の光芒が … 続きを読む
(Roma) めざめる感覚が 日常的な生活感覚が ドキュメントをつくりはじめて … 続きを読む
6 灰色の夕暮れの第二景。ふるえる心臓。このとき、つきぬけるような戦慄を、私は … 続きを読む
7 地表すれすれで棲息しているのは私ばかりではない。蛇のように低い吐息を這わせ … 続きを読む
多重的な意識が引き裂かれてゆく そこまで意識が降りてゆく 死のことを考えつづけて … 続きを読む
既刊、未完の詩集をこのBlogに移行するつもりだが、「魔の満月」(1977, 書 … 続きを読む
8 地面を引きずって徘徊するその意識は、決して地面に引きずられてはいないのだと … 続きを読む
一次元は内部をもたない から斜めに走ることがある わずかの隙間だから見えること … 続きを読む
9 皮膜などはたしてあるのか。BはB’に対して方向性を持っている、 … 続きを読む
認知不能の血にまみれてつぶされ ひしゃがれた太陽が顔を出す 朝はあおくて 実在し … 続きを読む
10 (肉体そのものである意識) では、足の裏にも好きなようにさせてしまえ。真 … 続きを読む
変質したり 切りきざまないで いつでも 同じ形をしたものが 支配されない 自由な … 続きを読む
0 憧れて風雪数千年の都市に至ってみれば今まさに時代は肛門期である 半身が獅子の … 続きを読む
11 (幽霊についての挿話) その形象が訪れたのはそのときだった。音もなく開く … 続きを読む
囚われている太陽に ジンズに さしこまれる 暗箱(オブスキュラ) 重圧に押しつぶ … 続きを読む
i – 1 岩窟に刻まれた扉は開き戸ではない 灯影の妖し気な揺らめき … 続きを読む
12 意識、このことばを何の定義もないままに使うことを浅薄だと、私は断定できな … 続きを読む
i – 2 セント・ピーターに在留を許されなかった博士は 目玉を狙う … 続きを読む
ひとかげがきえるつぶれてきえる しかいがふるえてへびがくねる いしをはらむかふく … 続きを読む
13 ――わたしは何について考えたらいいのかしら。何かを愛しているという錯覚、 … 続きを読む
ブログ開設と同時に、twitterを始めてみたのだが、つぶやきっぱなしというのも … 続きを読む
i – 3 中空でふんぞり返っている邪悪なるものの舌に白い裸身を翻弄 … 続きを読む
アメリカも、中国も、日本も、官僚と権力はことを急ぎすぎている。なにか、共通して性 … 続きを読む
アクセス数が多くなり、コメントスパムが急増したので、当分、コメント欄は非使用にし … 続きを読む
14 (癌細胞と画家との対話) 「自分が肉体のゆらめきなのか、意識のゆらめきなの … 続きを読む
i – 4 闇に囁くものたちの勢力が拡がるにつれ 再び蘇ってゆく火と … 続きを読む
ドキュメント風に、楽屋裏の表情などから入る。形式的で胡散臭い舞台裏だ。作り物の匂 … 続きを読む
プログのアクセス数が増えていくにつれて、コメントスパムが急増し、これらの抑制プラ … 続きを読む
15 神の秘密、Der Alte würfelt nicht. (神は賽を振らな … 続きを読む
ii – 1 世界創造説コズモガニーの窈窕(ようちょう)な原理によれ … 続きを読む
庭に据えられたベンチにもたれ、古いブライアのパイプをくわえながら、この小柄なフ … 続きを読む
16 魂というものがあるとはどうしても思えないのだが、その形態ということなら思 … 続きを読む
ii – 2 エルドレは周囲を見回して驚天する 誰もいないはずの船に … 続きを読む
連載公開中の「自由とは何か」があと数回で終了します。 そのあとに、実験的な詩篇を … 続きを読む
17 (短いけれど、ややこしい話) たしかに生命は自己複製、自己増殖が可能な有 … 続きを読む
プランクのふりこ、つつきだす首、 かざり、ひかり 星珠ころげ ひえびえびえと ス … 続きを読む
ii – 3 天幕を裁断する玲瓏な光がエルドレの微睡(まどろみ)を破 … 続きを読む
18 (悪夢) 私はいつのまにここに佇んでいるのだろう。それにしても、この場所 … 続きを読む
(犬雲) その夕方――。塔の見晴し台にたたずみ、私は遠くの空を見渡していた。時間 … 続きを読む
iii – 1 頭脳から天球が生ずる 古びた血から大いなる四海と河川 … 続きを読む
19 (dance obscura) 私たちは「肉の広場」ともいえるdance … 続きを読む
iii – 2 至高の秘儀ともいうべき王家の処刑は 既に枯死したボウ … 続きを読む
彷える 甲州街道をメフィストされよ朝未明 ゆらめかれる非在の分だけを空孔 抉られ … 続きを読む
「自由とは何か」連載、終了しました。 これに続いて、初期詩集「浣腸遊びを」連載し … 続きを読む
その時間にいないのはレイだけだ ニンジが好きかと 歩いて いきているナガタサンに … 続きを読む
河図洛書(行分け版) 低く垂れた倉庫のゆくりなくも満潮の迸り 月下の海面すれすれ … 続きを読む
詩集「魔の満月」収録の散文詩を公開するにあたって。 本編の詩篇「魔の満月」と同様 … 続きを読む
見夢録: 2013年12月01日 防空識別圏問題 秘密保護法が成立してしまう前に … 続きを読む
一、痕跡する朝ゆきの唄 痕跡する 老犬の宇宙吠え 指掏りの眼底から 単調の霜柱の … 続きを読む
ブログ立ち上げのために、毎日、かなりの点数の記事を投稿しましたが、もう一月を越え … 続きを読む
見夢録(行分け版) マミ夢メモ 魔行の曼陀羅の投影図法の歴史の鍋よ 記録表の数字 … 続きを読む
列車も、このボックス席も、窓外に映るものも、囚われている事象だった。時空の魔がこ … 続きを読む
――夜のまっさおな変貌をとおって ばらふり 蒼白へかすめよ地平線 斎(いみ) … 続きを読む
――天澤退二郎氏に 唄の剥がれてゆく 濡れ道に伸びる舌 澱みの星に 胸元あけ … 続きを読む
特定秘密保護法は、官僚の活動の隠蔽、軍事・外交情報の漏えいについての管理的な法律 … 続きを読む
楽天地(行分け版) 栄光は薄暗い小部屋の中で瞬いている はしゃいだ子供たちの頬に … 続きを読む
常欲する火の螺態 条痕うすく 蟲ばみのひとり語の 酷いあつさ 破れ天に 酸味の風 … 続きを読む
カテゴリーを調整しています。 また、それにともないメニューも変更します。 徐々に … 続きを読む
貝殻伝説(行分け版) ゆけども間断なく書物はめくれあがる タロットを用いて彼らを … 続きを読む
基本的には一つの混乱であり、その本質は一種の破壊的な錯乱であるようなものについ … 続きを読む
――父が面会にこないのはぼくはそれなりに分かりますし、それが父の闘いだと思っ … 続きを読む
恋の衍義 蝸牛の胎には女が宿っている 糠雨の茵(しとね)で 妖しい濛気に擁かれる … 続きを読む
(失われる記憶) 短い待ち時間の間に、私は地方都市の商店街をあてどもなく歩いた。 … 続きを読む
鐘楼に伴連れ八重の蔭潜み滴る炎 駒型に亡霊の叫喚を繋げ淵仰ぎ眼の斑 殉死者の広大 … 続きを読む
1 九段の坂を登っていた。テルミヌスが宿っているあたりにさしかかり、これからこ … 続きを読む
眷族の恋 不吉な光の綾の中に 青銅のロンボスがくるくる廻っている 誰に調律された … 続きを読む
突然 浅間山の頂点に大きな日没がくる なにものかが森をつくり 谷の口をおしひろげ … 続きを読む
2 年の瀬の、寧日もない頃おい土師(はじ)姓のタユイ神からの招待状が舞い込んだ … 続きを読む
わたしは空気に漂って水に棲む魚、大気という水の圏(くぎり)の ごうごうと滾る火の … 続きを読む
3 粧いがあらためられ、街の姿がいかほど移ろおうとも、道のありようにさまでの変 … 続きを読む
恋の柩 炎のうちにどんな秘儀があるというのか 媾合の壁画と古代神の立像とが 高窓 … 続きを読む
4 師走の空というのは、いかに晴れた日であっても、なにとはなく白々とした空虚さ … 続きを読む
グラニュの分水嶺 蒼天の吹きぬく縞の 龍吐水 網膜のひと剥げに 浮 … 続きを読む
神の手 その色彩を愛するものにとって 深い夜は幸福である 天文台の円天井は四大に … 続きを読む
エメラルド くすんだ緑色の路面電車が軌道の継目で轍の音を響かせている。たれこめ … 続きを読む
祝祭という詩篇――加藤郁乎頌 祝祭の季節が移ろっていったためか、生きかつ死ぬで … 続きを読む
序 妄想ヲ生ズ 彼ハマズ世界ニ対シテ復讐ヲ敢行ス。ソレハ己レノ存在ヘノ断罪デアル … 続きを読む
張成沢の処刑は8月の女優・玄松月処刑が布石のようだが、これで金正恩の周りには金正 … 続きを読む
妄想宣言 我らの時代はあまりに遠くへ押しやられてしまっている。 我らの時代は永遠 … 続きを読む
妄想ノート 〈人の海〉の中での真正の孤独/ たしかに実在的現実が死んでいる空間に … 続きを読む
降神術 少年は凍れる雪を抱いてめざめる 熱い唾液のこぼれる彼方に 夜の森がひろが … 続きを読む
妄想分析 あれから数年後のある日の午前三時、寝床の中で夢うつつにして謎の天人五 … 続きを読む
妄想の破片 〈魂の形態〉勾玉、渦、光の渦。頭部の形プラス尻尾という構成。首から下 … 続きを読む
曰く 情況とか状況論ということがいわれていたのはついこの間だったような気がする … 続きを読む
首どもの鎮魂 黒白の穴 とその 夜を一点によって染め返す白鳥の 化けた牝牛の如 … 続きを読む
かぎりのないはじまり――土方巽をかさねて あの人が見ておきたかったものとは何か … 続きを読む
パートAからBに至る 烏の 熱い羽声 啼く河から … 続きを読む
夜が準備され、はじまりが…… その夜、濃紺の夜空を背景に、金星と北極星の造りだ … 続きを読む
詩集 緑字生ズ 全172篇 題字=加藤郁乎 純粋思考の次元によれば、神、宇宙、全 … 続きを読む
1 nerve fiberの先に 太陽がある 雲がある 空はまた黄金 海には静謐 … 続きを読む
2 Vの字になって発狂する 碧の湖が小波のために淡い 旅のさの 夕焼空と雁の群 … 続きを読む
ああ麗(うる)はしい距離(デスタンス) 神谷俊美第四写真集『山海図』より “山海 … 続きを読む
紙田彰の詩(抄録) 入沢康夫 (略) 紙田彰氏の詩が、ずばぬけて豊かなエネル … 続きを読む
穴 私である 私を私有する私は私でない 私を 輝く夜 奇しくも鏡に 塗りこめる … 続きを読む
3 地平線が破裂する みはるかすばかりの原野 切れ間なく降る雪 夜はいっかな明け … 続きを読む
4 死体が雪の中を走っている 満員電車のスパーク こま切れにされた死体が 糊のよ … 続きを読む
窗櫺譜(そうれいふ)頌 視線の造型――物質創造のドラマ ?谷俊美第六写真集『窗 … 続きを読む
5 函館山、西の浦、宇賀の浦 腰まで濡れて告白室を出る 鴎と北極星 櫺子窓に凍り … 続きを読む
6 女よ、まなざしだけの女よ 妄想のほほえみ 一秒が百年となる 赤い唇が永遠に去 … 続きを読む
(奇妙な断片 その一) その夜、闇の中を歩く赤い顔の男を見てしまった。私はたしか … 続きを読む
特殊な組版なのでPDFにしました。 chromeで表示できないので、次のリンクを … 続きを読む
7 人が生きているというだけの手 悲しみの涙をぬぐうだけの手 あたしの手を握った … 続きを読む
8 悩みに敢然と立ち向かう苦い魂 ただ激しく生きるこの苦さ ミューズ アフロディ … 続きを読む
――大岡信氏に 旋毛風のなか 子午線をわけて 血の道筋が 雪原に現われる 蔽 … 続きを読む
9 夜の影 書物の病よ 夏がかすかに開いている あつい欲望につらぬかれている そ … 続きを読む
10 足をとらえる氷 道路はゴム棒のようにはねている 真珠の中の声 恋唄にこたえ … 続きを読む
註記:(作品成立期) 生魂荒らし 1971.4.22 季節 1972.6.16 … 続きを読む
11 しぐれる墓のどくろのじじい しぐれる墓のどくろの踊り やみの話 不思議なく … 続きを読む
12 歯ぎしりする 棘が深く刺さっている 針のない時計 恐ろしいものが靴の中に潜 … 続きを読む
13 深き御山の彼方 精霊どもの踊りの輪に 靄ともつかぬ御身の姿 さまよい歩き訪 … 続きを読む
14 locustが跳躍する 栄光の灰が降る 賭博場の隅でぎらぎら光る幸運 深ま … 続きを読む
15 ぼくの脚は一つしかない ぼくの眼は一つしかない けれども 夜が暗いからでは … 続きを読む
16 真夜中の夏 紺碧の空にトランペット 犬族の遠吠えを聴く 女の目の中にある雨 … 続きを読む
17 涙するグアナコ スケートに乗る異国の少女 この世のlimitを あの世のl … 続きを読む
18 豊かな農園が 海をへだてた半島にある 子供らの奇怪な成長が むくむく黒雲と … 続きを読む
19 落葉松と遺跡監視人(フィラックス) 赤土には 秋風とともに ファルスが生え … 続きを読む
20 銅鑼が鳴る メルポメネー ああ 秋の深い湖 裸女の像が永遠を見つめる眼で … 続きを読む
21 乱に曰く 稲架も取り払われ 農夫も土地に埋れる 田の土は 凍った白夜
22 たちもとおる 君に会えたのも 月のモノのなせるわざ そも梅のいらたか 幸せ … 続きを読む
23 寂しい夕暮とセレナーデ 枕言葉に冷や死んす 美女の足下に 人も知らない秋の … 続きを読む
24 クレイオーよ 地球儀が欠けている 眼は半月だ クルティウスの分類は デルフ … 続きを読む
25 宗教とはジャイロ効果 午後 稲妻が疾った みぞれが夜半までつづいた あたた … 続きを読む
26 狂気のはじめとおわりが永遠だ いまは塩汗 肌合わせ はじめとおわりが違って … 続きを読む
悪魔の受感 ――作品言語の夜に向けて 『文連新聞』第3号昭和49年4月6日付 … 続きを読む
27 ウィスキイが死んだ グラスのかわりに 骸骨をつかんだ 黒衣の女が エンゲー … 続きを読む
28 もろい骨が ガラス細工のように 鋭く突き出たかかと 貞操帯と卵 冷たいアス … 続きを読む
徴候としての現在〈上〉 〈作品言語〉の夜に向けて 『明治大学新聞』第1309 … 続きを読む
29 りりりり四季 愛が愛であるから (未来の歯茎を破って) 花のみの奇怪ふる … 続きを読む
30 崩壊辞典とべにしょうが 猫の死骸が吊られている 肥料にもならぬから 小便を … 続きを読む
徴候としての現在〈下〉 〈作品言語〉の夜に向けて 『明治大学新聞』第1310 … 続きを読む
31 雨上りの夜 ハヴァナの吸口を噛み切る 畑の中に 童女の顔が浮かぶ その幻を … 続きを読む
32 老いた額と古い都市 ヴィーナス 時の外側を歩く者たち 少年の息をとめる者
〈岐路・迷路〉 その1 ――岡庭昇の「成熟の構造」へ向けて 『明治大学新聞』 … 続きを読む
33 歩いているときに、なにげなく後ろを振り向いたことがおありでしょうか。そう、 … 続きを読む
34 無記名の日記の中の名前の あなたの隣に腰かけて 水仙は革命家である 草笛を … 続きを読む
35 アルティスへとやって来た 心あたたまる辛さ やりばのない眼 瞼の裏 瞳孔の … 続きを読む
36 門(フイーレ)の傍らで 聖マリア像が砕けている 生と死で区別できないから … 続きを読む
〈岐路・迷路〉 その2 ――岡庭昇の「成熟の構造」へ向けて 『明治大学新聞』 … 続きを読む
37 〽鬼の目おちて 冥土の唄にひえびえと ああア お腹の首の … 続きを読む
38 ルーキーナよ、聞け 宇宙の裂目から 巨大な蛆虫が涌き ドン・キホーテが凱旋 … 続きを読む
39 熔接工の家を訪ねると 小さな煖炉に ヴァシリキ式の陶器 燃える水晶時計 雪 … 続きを読む
40 己れの造物主が己れだと知った人形が いささかくたびれはて 死体のふりして … 続きを読む
41 朝を抱きしめるように 冷えたビールを呑んだ それからいとまごいをし ほとぼ … 続きを読む
42 夕陽が溪間にとどまっている 呆れガラスのはばたき 時忘れのなめくじ 樹々の … 続きを読む
43 くりなされた空 (闇の空模様) 猛禽類が翔ける その飛跡が尖っている 鋭い … 続きを読む
44 弦のような肋骨 ブナの木蔭で 死体の手の甲が重ねられる 下草に埋れて爪が光 … 続きを読む
45 frogよ 跳躍よ つながりにたたみかけ まらが抜けたり刺さったり きちが … 続きを読む
46 ずいぶん深い思考に浸っていたときに、急に目の前がぼんやりして視点が定まらな … 続きを読む
47 火の時間の火 手のつけられぬ立体
48 やはり女は開かれていた なぜなら 黝んだ乳首が冷たい ゆで卵を剥きながら … 続きを読む
49 ヤマトネコ 光はアルコールの匂いを放つ 言葉つきの怪音波 詩が書けないので … 続きを読む
50 海面に、辷り落ちるもの 時へ向かう時の皮質 また人骨が出てきた 突堤を駈け … 続きを読む
51 僧院でコーヒーを淹れる 特別な日 ドイツの農村では 花々が枯れる ホフマン … 続きを読む
52 死装束の姉をかき抱く少年 銃と毒 筋肉のわななき 彼らは追放されていたのだ … 続きを読む
53 ひとりひとよのふかなさけ ふたりふたなりうしろがみ さんにんさんずのかわわ … 続きを読む
54 眇の売笑帰に地図をさしだした 市場の隅に 夜の脂がたまっている 彼は旅に出 … 続きを読む
55 山間の自然道のわきに 朽ちかけた雑木林と 寂れたせせらぎがある ロートレア … 続きを読む
56 晋書に 大禹観於濁河、而受緑字 唐詩訓解に 洛書、五十六字、皆緑なり 張説 … 続きを読む
57 おおNemesis 神々の憤り 会陰部が妙に剥がれそうだ
58 曲がる指 溶ける軟骨 ランボーのことを考え 味噌汁をすする 霧よ 汝のしめ … 続きを読む
59 石床(スティロバテース)の蔭で 勁くしなう竹を埋める 月が射すと処女 竹の … 続きを読む
60 アンテロースよ 敵は味方の顔をしながらも敵 なれば、味方は第一の敵である … 続きを読む
61 幻の童顔 鬼ごっこをしている子供の肉が腐っている 礼魂に長無レ絶兮終古とあ … 続きを読む
62 ?風の吹くままあら田の畔(くろ)で 喰うも喰わぬも雨まかせ おいら … 続きを読む
63 耳を尖らす馬を買おうと うすむらさきの橋を渡った 夜の街には白い首の女たち … 続きを読む
64 真珠を噛み砕くと いま、ぼくは狂う えいのはだらにしっちゃっちゃ れるっば … 続きを読む
65 樹木の睡り 国家はどこにもないという嘘 嵐の夜に強姦された娘は 捨てられて … 続きを読む
66 方舟にわく蛆 噴水で沐浴するカエル 彼らはポロス石の泡を啖う もう、夜だか … 続きを読む
67 断食者の首、鎖の鳴る音、うたたね、しのび笑い、音にならぬ声、地下の泉への道 … 続きを読む
68 長い旅の果てに フィラリア病の老人が 樹木の睡りを眠る 黄色の雲がひとがた … 続きを読む
サトシという少年の冒険 サトシという少年の 頭脳の向こうにある頭脳 誕生しつづけ … 続きを読む
69 街外れで 隊商の列を幻想した ミイラの顔した男たちに どこまで行くのかと訊 … 続きを読む
70 サルボウガイよ 錨は永遠に錆ついている 菫色の小宇宙よ 星々の間が広がって … 続きを読む
画家になる少女 ――初めての個展で 水に溶ける 絵の束を抱えた 少女が ふり … 続きを読む
母胎としての無 次元は対象を措定して初めて存在する。対象(他者)がなければ次元は … 続きを読む
71 銀の首輪をつけ 腹をふくらませた牝犬のいる公園で 薄い色の体をもてあました … 続きを読む
72 愛の現場での燦々たるerotic 刺青師は年老いて 姦淫にまたたく股間で … 続きを読む
73 新聞配達人の投函でめざめる 土の家、水の庭 靴底に鍵をしのばせ びっこをひ … 続きを読む
74 脂の浮いた甲を包む、赤いエナメルの靴 地下鉄が空を走るなんて! まつわらぬ … 続きを読む
ものの誕生と復元力 何もない状態からまず二つの状態に引き離されるためには、何もな … 続きを読む
「宇宙音楽」の事象地平(ビッグクランチ) 僕はmicaのように 剥がれ落ちるべき … 続きを読む
75 妖しの声に窓の月 指につたわる汗も淫らな
76 涙をどこかで暖めようと 声を紐にして 音のない窪地を歩く 土の景色は黄ばみ … 続きを読む
内部に向かって 宇宙は増殖・拡大しているのではなく、つねに一点のまま、内部に向か … 続きを読む
77 マゲイは棘だけの生き物 棘でつくった針と糸 鋭い味の酒 鋏がカランチョのよ … 続きを読む
78 鞍型の頂から 星に向かう星 (宇宙の空腹って何のこと? そう訊いて旅立った … 続きを読む
現実とは何か 絶対的な現実があるのではなく、存在の周囲の日常レベルという距離があ … 続きを読む
水の眠り なでしこの散るホタル 器と器の重なり 骨のつながり かすれた色の花びら … 続きを読む
79 下駄の歯を 風の裂目に蹴り上げた 湘南電車で太陽を見よう 少女の黄色い肌を … 続きを読む
80 少女が叢で強姦されたと知り 旅に出ていた 地むぐりの神話はどこにでもある … 続きを読む
現実について 「現実」ということばは、どうも卑近な絶対性の手垢にまみれているよう … 続きを読む
81 なにものかに死が拐(さら)われた スナモグリのように 君は十字路から駈ける … 続きを読む
82 闇の凍りつく動悸に冒され 離婚して、若い女と暮した男 音楽の器械をつくり、 … 続きを読む
情報宇宙とブラックホール 宇宙はすでにブラックホールの中にある。 事象地平には全 … 続きを読む
拒否方程式 七色分割のためのエチュードVII 国家は解体しても 関係に服従す … 続きを読む
記憶とは時間、因果律 時間次元もついにはかたまりとなって、全宇宙の中の閉じられた … 続きを読む
83 尖った強迫観念 down townのとあるバーで 手を洗う酔払いのニグロ … 続きを読む
84 うちよせる波。巌の暗い穴に。人の波。海原でふたたびこわれてうちよせる波。白 … 続きを読む
ただ一点に あらゆるものがただ一点に重なっている。 空間も時間も、さらにはすべて … 続きを読む
現在ポジション 一個の人間存在をミンコフスキー図の現在ポジションとすると、絶対未 … 続きを読む
(グァダルーペの傾いだ教会) グァダルーペの傾いだ教会 陽気なメキシカンと騒いだ … 続きを読む
85 倡に曰く 人生は無敵、ただ鉄片 Orionの光が 男の眠りを照らす こわれ … 続きを読む
時間のスケール ミンコフスキー空間によると、空間は光の世界面の鏡映として存在する … 続きを読む
86 アポロポスの鋏のままに 男は旅に出るだろう アラウカニ帝国の末裔に出会うだ … 続きを読む
暗い風 「定稿」 ――――アルゼンチン・タンゴの曲詞 一 窓を開ければ 深い … 続きを読む
87 運河の見える駅で下車する 街には針が流れている その家を訪ねると 青い柿の … 続きを読む
88 ポーモーナ、果実の奴隷 幼きもの美しきものの肉市場 透明な白樺 ニンジン色 … 続きを読む
89 にわたずみ 反射鏡の向こうに さざらめの気圏 天円地方、チューリップが立つ … 続きを読む
90 首には歯型、象牙の肌 天門を照らす眸、掌は産卵期の貝 はまふゆくくたりよ、 … 続きを読む
質点 質点はこの世の実在である(n > 0)。 つまり、実在を質点、基点とするこ … 続きを読む
グラビトン=宇宙背景放射 三次元球面での表面張力のイメージ ただ一個のグラビ … 続きを読む
91 三百六十五人のムネーモジュネー 穴居人は知らない 少女をかどわかす暗黒を … 続きを読む
92 夢精の夢のejecta 野ごしらえの花、花びら 白い牡鹿、スリッパ 鍾乳石 … 続きを読む
複雑系 エントロピーの増大という観点において、複雑系が生命システムを、またさらに … 続きを読む
93 元気とともに生まれる 奇妙な野菜のジュース 雨降りの日、大陸では 赤と黒の … 続きを読む
94 安楽椅子と加速度 胸のうち アルファにmarijuanaベーだよガマン 想 … 続きを読む
身体というかたまり かたまりというのはレベルがあるようだ。 量子というのはかたま … 続きを読む
(1) そもそもベルの鳴り方からして妙だった。低い微かな音でありながら、目覚時 … 続きを読む
95 神仏不合 粘膜のような魔性 時間とににω子の聖体拝受 ω子といえば θ子と … 続きを読む
96 クジャク! という声に振り返ると 太陽が破裂しそうな勢いで落ちている 女は … 続きを読む
池田龍雄氏への書簡1 前略 先日はわざわざお越しいただきありがとうございます。 … 続きを読む
(さかしまに) さかしまに溶けゆく匂ひのラワンデル 美酒(うまざけ)が立つ その … 続きを読む
句 つらるゝ舞姫 ――土方巽の第一番の弟子にして、稀有の舞踏手・芦川羊子の誌 … 続きを読む
97 単つの瓦礫からなる島の ヒカリゴケ、 アナアオナ ふたりで海を渡る ひとり … 続きを読む
98 蝉ゃ腹でぇ鳴くのだが、敵娼の骨を抜き取り賽の目切りに百三十六、それをテーブ … 続きを読む
池田龍雄氏への書簡2 前略 (略) さて、ピラミッドの話は例が悪かったようで … 続きを読む
(1981.1.1 札幌にて撮影 彰30歳、父・治一58歳) 句集 睡りつづける … 続きを読む
線は境界または理想化された1次元(ひも) 境界としての線は位置の不確定なあいまい … 続きを読む
99 ひきかたむうすい骨盤 壁をへだてて 女の首筋が燃える ――忘れたのよ、大切 … 続きを読む
100 一九七〇年十一月二十五日
吟行 7.2 花の名を 知るから花の香りあり (バラの花壇での「花名」を見ること … 続きを読む
次元を折り畳む 折り畳むということは、スライスしてクランチすることになるのだろう … 続きを読む
101 絵画的な静寂
102 死刑執行人G(ゲー)よ、おれは求愛した 死者の街、師走の、革命のべル お … 続きを読む
自由なるかなはるかなり (1989年初、パソコン通信PCSでのハイパーノーツ … 続きを読む
103 おれは対称形だ 皺の中に躯が埋まる 生者はいない、生者は!
104 偶然の死、真実の嘘 首と涙 月光崩壊! いかな断片をも忘れ去るべし
意味と絶対的外部客観 あらゆる実在に意味を求めるということは、外部からの規定、つ … 続きを読む
裂ける 裂ける 意志を孕む下腹を裂ける 早熟な朝の儀式を裂ける 裂けながら 礫石 … 続きを読む
105 涙を流す人の罪深さ 君たちのやさしさのびっこの靴音 自由であると信ずるに … 続きを読む
106 気の遠くなる夜とbandoneon いのちの狂おしさ、むしばまれた夢 あ … 続きを読む
〈存在と宇宙論〉引き離されて ――対称性について 引き離されて 引き離されて … 続きを読む
〈美術衝動〉「10-36秒」L, R Super-string 10-36秒 ( … 続きを読む
公園 ――2007年10月29日の吟行から 蚊柱や 木洩れ日とよむ秋 … 続きを読む
107 空気をそそのかす 死人形 花人形 水人形 意味ありげなふくみ笑い 仏壇の … 続きを読む
108 世の中の寝静まるのを待ち 声高らかに、奈落の恋人を呼び出そう (いつしか … 続きを読む
109 躯が人形のように透き通り 心臓に緑色の杭を打ち込むもの 汝、ああ、この疲 … 続きを読む
110 匹如身(するすみ)の間男の死に似せて 白い手袋を叩きつける 尊属を殺せ! … 続きを読む
顫える 顫える 顫えて粉る 薬物溶液から培養されて 骸骨まで冷える 泥かむりの青 … 続きを読む
次元のかたまり 3 実在が有限であるならば、次元は曲率を持つために円環を結んでい … 続きを読む
思考と「見方の問題」 意識は身体に属する機能であると思われるが、精神、魂などとい … 続きを読む
111 ?蔭に日向に声かけて 叩き起こして死するなり おれはおれの死を叩き売 … 続きを読む
112 庭掃除。水の流れる暗黒。ふたたび、夢は時間じゃない。冷蔵庫、牛乳の中で猫 … 続きを読む
繰れる 繰れる 繰れづけて 命を繰れて ひきかえに花 横恋慕や 的外れの罵言を … 続きを読む
(無明とは) 無明とは椿のごとく寒雨なり 裏道の溝塀の底 見えざりき 立つこと … 続きを読む
繋ぐる 繋ぐる 反照の緑葉からこぼれる紙凧 繋ぐれて 夜をこぼれる 繋ぐれのまま … 続きを読む
113 cinnamonの喉ぼとけ―草色の貌―哀しみの恋―物質の肉体的特性―撃鉄 … 続きを読む
114 方 格 規 矩 鏡の渓谷〔prismの内容物〕鏡の平原 の山腹 乱反射 … 続きを読む
重ね合わされた次元 包含-被包含の構造を、芯のない、外部のない、タマネギの皮のド … 続きを読む
添える 添える 吹きこぼれる感傷 添えられて夜を識り 拒なな情行をとぎられる 添 … 続きを読む
115 永遠に鳴りつづく楽器 忘れかけた革命 白い腕がいちだんと強く、腰を抱く … 続きを読む
116 ありふれた恋にはせじと かわいた舌で口ずさむ 流るるは 灰色の脚のさすら … 続きを読む
〈美術衝動〉「解放衝動の探求」I,II 制作: 2006.4, oil, c … 続きを読む
117 老ゆるものの醜い肉体、ふるき世界 痩せほそるいのち、はかないいのち それ … 続きを読む
118 老ゆるものはその生涯で、あらゆるものを畏れていたか、畏れの対象になど出遇 … 続きを読む
〈美術衝動〉Super-string Theoryシリーズについて 宇宙をイ … 続きを読む
119 汽水よ 赤褐色の海藻がからまる 青く光る小魚の群が岩場で餌を 泡立つ波間 … 続きを読む
120 獣たちよ、海をみたすものよ、崖の切尖 湖から森へ 街を渡り さらに山脈を … 続きを読む
〈美術衝動〉Super-stringもしくは立ち上がる解放衝動 それぞれの存在、 … 続きを読む
121 紫色の肌に白い斑点をもつ貝が、夕焼けに染まった海の中を流れていく 渦がそ … 続きを読む
122 海猫の飛び交う崖よ 涸いた血の色をした岩壁よ 狼の吠える崖 幼い人魚の集 … 続きを読む
(選択的実在というはがれが) 選択的実在というはがれが 幾層ものめくれからこぼれ … 続きを読む
鬩ぐる 鬩ぐる 水晶をゆるむ塔に篝る 赤赤く発情される蟒を夜景 煌やまぬ埠頭から … 続きを読む
123 荒涼! 荒涼たる海よ おお、革命の蘇生を願うなかれ 砕かれしこころのまま … 続きを読む
124 灰色の砂を眺めていた少女が、老人の話に眉をひそめる 蟹が砂を噛むのはかた … 続きを読む
〈美術衝動〉浮游するオブジェ 巨大な絵(平面)の前で かすかに廻転する 粘土製の … 続きを読む
125 獅子のように咆哮を放ちながら泣いている少年 薄暗い地下道を行き交う人々が … 続きを読む
126 一九六九年十一月 冷たい部屋の眠り さめざめと泣いていた少女は 女に変身 … 続きを読む
恐るべき瞬間の時間サイズ 第14回展「10-36秒」に寄せて 僕らはある日、 … 続きを読む
127 少年よ、君は 部屋の隅で小さくなって暮らす 蝋燭のゆらめきが、君の夜をお … 続きを読む
128 季節はギロチン 精神が粉々に飛ぶ ラッキョウのように 死に接吻し 青い静 … 続きを読む
129 この皮袋を通じて 線路上で爆発し 橋桁の滴となる
130 冬になると人死にが出る。そんなことを思い出していた。「やっぱり不謹慎だよ … 続きを読む
魔の満月 第一部(習作) 直角に突き立つ例の空は腔腸動物のように謎めいた通路―― … 続きを読む
131 門札の夜叉が 西洋風の笑みを洩らす
132 旅館の長い廊下。途中、壁の漆喰を噛みしめ、突き当たりの仕事場に。竈の燈影 … 続きを読む
魔の満月 第二部(習作) 渦紋 首を絞めつける妖気が円形の数枚の花びらを放射し … 続きを読む
133 夜を記憶しない日々。煙と湿度。鳥に変身する。強い翼で都市に嵐を。塩、ガス … 続きを読む
134 鉛の焦げる古都。匂い。肥大した河。褐色の指、腕、緑の胴体が。長雨の中で燃 … 続きを読む
(交感神経に) 交感神経に作用する薬物を服用している。 面妖なことに、脳の活動部 … 続きを読む
〈存在と宇宙論〉タマネギ理論 包含-被包含の連鎖の構造を、タマネギの皮をドーナツ … 続きを読む
135 ガラス張りの部屋で。世界の空気と疲労、冷酷と美貌と。躯にそそがれる時間、 … 続きを読む
136 parrotの一瞬、鉄塔が切り崩され、地面に叩きつけられ、地球の内部を発 … 続きを読む
〈存在と宇宙論〉思考と意識 意識は身体に帰属している。身体は機構であると考えると … 続きを読む
137 白雨あり。踏切警報。異常な緊縮。秘匿すべきことば。青い死の光を搗く金属。 … 続きを読む
138 ギボシムシと火縄銃(アルクビューズ)! 潮の核心(ほと)を貫通する から … 続きを読む
139 はたたく海鷹 生命の暗渠、円形墓地(エプシロン) 存在の滴化
140 Jacobの杖、パレステイラよ 下着に醤油がこぼれている またしても光の … 続きを読む
次元のかたまり 2 次元とは何であるか。1次元、2次元、3次元の空間次元という日 … 続きを読む
141 光は敵だ! そらいろの鳶が翔ける 虹は見えるものではない ヒッポドロモス … 続きを読む
142 麝香とビュラン しめた! 声高にひと声吼えてorang-utan 下腹を … 続きを読む
次元のかたまり 1 多次元は「n次元, [(n-1)次元..1次元]次元」という … 続きを読む
143 もはや腰などは臀部、音だけが立つ 倒立する肉体 苦難にあふれる路上、世界 … 続きを読む
144 疲労と睡り、絶望と苛立ち。みもだえすることとふるえあがることと泣き立つこ … 続きを読む
〈存在と宇宙論〉実在というプランク・サイズ 光速度がゼロであって、次元の塊がマイ … 続きを読む
あらわれ 次元があらわれるのは 重力が生まれてからに違いない なぜなら 真空であ … 続きを読む
145 はだけがみ。 うららかにむれつく樹脂の匂い。 裸のまま遠ざける。女はうが … 続きを読む
146 霧の方のエオスよ 幻の頭蓋骨を造形せよ その暁の蟻酸、若い肺を抉る…… … 続きを読む
147 ねぶるるものらのねむり はだかのOrchis しりだちからからみねへ ね … 続きを読む
148 迷い猫の後をつけて、眼は見ず知らず ガラスの破片の浮かぶ都市や 天袋を覗 … 続きを読む
149 アジサイに包まれて 涸れはてたものを密葬する夜 伸スレ眉ヲ 月影の女の純 … 続きを読む
150 倒立した円錐図形 シャクナグの可憐な綱渡り 秋篠寺の黒い石が汗をかいてい … 続きを読む
151 寝息をまねて脈をとる 顔のない顔 その皺の中を躯が流れる 交わりではなく … 続きを読む
152 猫の耳と称ばれる ヒマラヤ杉の下蔭から 玄関(プロピレイア)に入ると 股 … 続きを読む
153 人台の前で尾を置き忘れた両棲類 梟のように頬をふくらませた男の死亡通知 … 続きを読む
154 舷梯(ギャングウェイ)を跳び降り、夏の空は眩しい マドロス帽をあみだにか … 続きを読む
155 握力と鮮血 羊水があふれ 地球が母の姿を現わすと 寸前の胎児が死にかける
156 黄金の木枯し、骨だらけの枝 樹液のひからびた幹 唇と放尿 反目の首が嗤い … 続きを読む
緑字生ズ 157 (その壁画は) 157 その壁画は アカンサスの葉飾りのある … 続きを読む
158 星からの悪い知らせだ ねえ、 マスター! 太陽は衰弱をきわめた the … 続きを読む
159 溌(そそ)げ、隕石 撥ねよ、両棘矛(パルチザン) 不軌をはかるべし 燃え … 続きを読む
160 旺盛ナルメシア 反抗期ノヒエラルヒー 勝利ヲ目前ニシタアルコーリック 神 … 続きを読む
161 ラレースよ 黴毒の源、方舟にわく蛆よ 乱気流の中を移動するアジビラが 火 … 続きを読む
〈美術衝動〉作品「転移」1, 2 相転移phase transitionとは、 … 続きを読む
162 一億の首を吊る目のさめるような夢 未来という濃淡にさらされた銀河が、音の … 続きを読む
〈存在と宇宙論〉単位と包含 閉じ込められている存在のあらゆる単位。単位はつねに包 … 続きを読む
〈存在と宇宙論〉存在の単位 体の中にあるあらゆる単位、それらが自己を持つ。 自己 … 続きを読む
(2014.4.12の紙田彰の娘の結婚の祝い) 卯月に花嫁となる女 … 続きを読む
画家になる少女 ――初めての個展で 娘の結婚式, 2104.4.12 水に溶 … 続きを読む
163 アルメニア産の粘土でできた男が (窃かに夜を見て) かぎろう月のあおく匂 … 続きを読む
〈存在と宇宙論〉(存在は) 存在は包含という構造を余儀なくされているかに見える。 … 続きを読む
十時二十一分 月が曇っていた だから妙な気がしたのだ その時間に 眠りの光の中に … 続きを読む
164 サーカスの来た朝 鏡の中によりかかるものら ポゾランにまみれた火の鳥のあ … 続きを読む
165 忘れさられた砂場のトンネルが 半分崩れたまま 風にさらされている 街の生 … 続きを読む
166 銀色の頭髪 タコブネと虹 象徴画法に目くじら立てるな 魚の瞳孔が光り 蛇 … 続きを読む
魔女の翔く 大理石の ふつふつ あぶくの唄う沼底に 横たわりてあるもの 満月の … 続きを読む
〈存在と宇宙論〉無限点について 物質(エネルギー)が無限点になりえないということ … 続きを読む
167 魂くぐりの電車が 時間の濃淡を呑み込んでゆく いとおしき大地、つらなるう … 続きを読む
〈存在と宇宙論〉世界面 世界面のスライス 世界面の不連続 物質情報のコピー 物質 … 続きを読む
女陰 つつきでる顎 その落下 ささらさら 月光の波紋 なにごともなく水の朝が這い … 続きを読む
168 八重桜 夜の契りの炎の滴 別れ霜 墓地はだらなり灰まみれ お粥腹、お粥腹 … 続きを読む
169 黒ずんでもおらず、澄みきってもいない 佇んでも、駈け出してもいない 肩を … 続きを読む
〈美術衝動: 文〉(作品に取り囲まれるということが) 作品に取り囲まれるというこ … 続きを読む
〈存在と宇宙論〉(実在とは) 実在とはエネルギーのことである。 また、そのものか … 続きを読む
170 神が神であることから始まる神への愛 汝を絶望する汝への愛 愛が愛であるか … 続きを読む
171 最後の夜に、匂いやかな異物 出生は膣をくぐった時からまどろんでいた
〈存在と宇宙論〉(死ぬまでに知りたいことは) (死ぬまでに知りたいことは) 人間 … 続きを読む
〈美術衝動: 文〉息を吹きかけたとき 奥行きがあるように見えるが、向こうは平坦で … 続きを読む
〈美術衝動: 文〉作品“Super-string Theory”についてのメモ … 続きを読む
172 梁に吊られたトウキビ、タカノツメ 爆(は)ぜる白樺 少女の煙 田舎を懐旧 … 続きを読む
魔の系図 I 翼のある種族 マンドラゴラの繁る 夕暮れの赤い空 凍りついた眼球が … 続きを読む
〈美術衝動〉「偶然の連鎖と消失」シリーズ [I](無から) 無から偶然にも力が生 … 続きを読む
〈美術衝動: 文〉「偶然の連鎖と消失」シリーズ(始まりに) 始まりに始まりの命名 … 続きを読む
〈美術衝動〉「偶然の連鎖と消失」シリーズ [II] (まず、偶然にも) まず、偶 … 続きを読む
〈美術衝動: 文〉「偶然の連鎖と消失」シリーズ [偶然] 偶然は「全智全能」であ … 続きを読む
〈美術衝動〉「偶然の連鎖と消失」シリーズ [III] 偶然の連鎖と消失 〈偶然〉 … 続きを読む
イメージ情報 夢は情報断片の小さなセンテンスの分散集合であるが、夢を見るものは、 … 続きを読む
(光は命を) 光は命を奪い 暗黒は心を奪う 窓を閉めろ 今すぐ 厚いカーテンを降 … 続きを読む
〈美術衝動〉「偶然の連鎖と消失」シリーズ [IV] 無の消失 ○無の概念、抽象化 … 続きを読む
忍び笑う魔 夜のふかい残響 くらい奥深さから 霜のはなばしらが うすく灼けついて … 続きを読む
(俺の描く絵が) 俺の描く絵が ずっと並んでいた まず星が降る 光の繊細な渦 強 … 続きを読む
(見るものは) 見るものは重なる 見えざるものが自ずから現れんと欲する [作成時 … 続きを読む
(トマトという水) トマトという水 レタスという水 水の野菜が流れてゆく [作成 … 続きを読む
etude群について 稲光のような切実な白昼があって油絵具を買うことにした 八号 … 続きを読む
(もの思わしげな) もの思わしげな男の うつむく角度の首の線 夕暮れの薄雲の色に … 続きを読む
(こちら側から) こちら側から突き出ていくものと、向うからやってくるものとがキャ … 続きを読む
物質創造の大版画家・小口益一 (追悼) 物質のありかをぢかに触れるなり 小口 … 続きを読む
(芸術が) 芸術が永遠なんてのも嘘 芸術は人類とともに滅亡する 音も、像も、言葉 … 続きを読む
(化学反応) 化学反応 不完全な存在であるところの 人間は ただの化学反応の集合 … 続きを読む
棘 家具など調度品の 装寝具 まんべんなく 霜の降り バイスィクル その樹海に … 続きを読む
棘という神話 館は一対の強靱な鋼となって合わさり、融解寸前の痴呆状態を弾頭部に充 … 続きを読む
(私にとってみれば) 私にとってみれば 私の死は 生の終わり 宇宙の終焉 永遠の … 続きを読む
(過去を) 過去をふり返ることが恐ろしいことのひとつ 未来はあるかないか分からぬ … 続きを読む
(触れうるもの) 福原哲郎に 触れうるもの 生ずべきもの 動かざりしものの移動 … 続きを読む
車座の中の通夜 ――常ならむ 憂世の闇をたち逝かば かぎらう月の蒼く匂ふ … 続きを読む
宛名の魔(名宛ての魔) 宛名が (背筋を ぞっと) 指先から離れ (指先から離れ … 続きを読む
(死のことを) 死のことを考え続けているから 生きているという実感があるのかも知 … 続きを読む
フラグメントの独立 形、線、色を現すことを作家という行為主体に求め、あるいは同調 … 続きを読む
strand における魔の…… 浜辺に 磁気帯びる魚 繊い吐息 転がる無数のガラ … 続きを読む
この資料は、25年前の1989年にパソコンネットワーク「PCS」で公開したもの … 続きを読む
アピール! 天安門事件: 02 ●Date : 6:02am 9/11/89 F … 続きを読む
primitivity: 原初性 ――ないものを創造することの充足 存在と宇 … 続きを読む
アピール! 天安門事件: 03 ●Date : 1:15pm 10/14/89 … 続きを読む
アピール! 天安門事件: 04 ●Date : 4:39pm 10/29/89 … 続きを読む
アピール! 天安門事件: 05[了] ●Date : 12:35am 12/31 … 続きを読む
戒厳令下の北京を訪ねて【上海篇】[01] 1 6月3日の深夜から、私は次のよ … 続きを読む
戒厳令下の北京を訪ねて【上海篇】[03] 3 1989年6月21日 中国民 … 続きを読む
戒厳令下の北京を訪ねて【上海篇】[04] 4 サマータイムを採用しているせい … 続きを読む
戒厳令下の北京を訪ねて【上海篇】[05] 5 この街を東西に走る路は南京路と … 続きを読む
秋禊 あああああ ああ これほどの これほどの んんん まっさおな夜 主よ! 御 … 続きを読む
戒厳令下の北京を訪ねて【上海篇】[06] 6 この匂い、この町並み、この貧し … 続きを読む
(巧くなりたいから描くのではない。) 巧くなりたいから描くのではない。表現したい … 続きを読む
〔イメージ〕 光の波長。増幅・干渉・減衰 反射:吸収〔強度・明度〕 角度、スペク … 続きを読む
擬宇宙論:5485: 〈存在と宇宙論〉思考的直観 存在は何ものかに収斂されていく … 続きを読む
*この章、脱落しました。以降のタイトルの番号訂正しました。 戒厳令下の北京を訪ね … 続きを読む
戒厳令下の北京を訪ねて【上海篇】[07] 7 今度の事件で、学生、市民、労働 … 続きを読む
眼の街 I 裂かれた眼球 うす桃色の襞すじに 街の景色が ばたばたとまり モンシ … 続きを読む
戒厳令下の北京を訪ねて【上海篇】[08] 8 ところで、暗い上海の街から市の … 続きを読む
●Date : 3:14pm 9/25/89 From : pcs00372 ( … 続きを読む
三、始まったシロ狩り しかし、私の期待に反して、A市もA市の属するD省もあっ … 続きを読む
(地下室といえども) ――2003.6.6 初めての個展で 地下室といえども … 続きを読む
(『光明日報』1989.5.15 [中青年哲学家掠影]「王鵬令」より要約。翻訳: … 続きを読む
徴候(きざし) 青いGomorrha 青いSodom 青い夜 伝説の卵の中の … 続きを読む
(『光明日報』1989.5.15 [中青年哲学家掠影]「王鵬令」より要約。翻訳: … 続きを読む
(『光明日報』1989.5.15 [中青年哲学家掠影]「王鵬令」より要約。翻訳: … 続きを読む
〈存在と宇宙論〉もの(存在)が もの(存在)が光の多様性を開示している 光は何も … 続きを読む
イタンキ浜 海岸の砂山に登る五歳の子ら これから記憶を積むこれらの子らの 取り戻 … 続きを読む
(直線、矩形は) 直線、矩形は 人間のみが生成した抽象 つまり、存在していないも … 続きを読む
科学主義への批判的考察――王焱訪問 本紙記者 剛建/訳者・佐丸寛人 王焱。文 … 続きを読む
遮断機 気泡の…… 気泡の あてどない気泡の 斜行するあてどない気泡の ふぞろい … 続きを読む
中国現代化: 西を見るか東を向くか――詹小洪訪問 本紙記者 易運文/訳者・佐丸 … 続きを読む
現代中国ポストモダンの旗手たち――新聞の切り抜きから 佐丸寛人 6月4日事件 … 続きを読む
astérisque 正体不明の言葉 律法 体腔にある鍵穴 荘厳な … 続きを読む
(窓から覗くと) 窓から覗くと 沐浴する異国の女のような 幽霊だった
しばらく、このような形で日記を残しておく。 日録■2014/05/14- ■20 … 続きを読む
日録■2014/06/01-06/13 ■2014/06/01 2014/06/ … 続きを読む
ビデオ通話をしながら コスモロジーもどき 中華味の重湯から 歩き続ける 怒れる人 … 続きを読む
満月 夜は来た 妖しい吐息が裾野に広がってゆく 頭上に爛々とかがやく紅蓮の月 お … 続きを読む
肉体の運命 死者の肉を 刺身にして弔う風習を知ったのは 露地裏で少女と遊んでいた … 続きを読む
贖罪 古来、夜の使者と馴染み、悪逆非道の律法を糧とし、巻貝の好餌として封印された … 続きを読む
〈美術衝動〉作品「Occurrence of liberating impuls … 続きを読む
声の届かぬ部屋 I 魂と肉体を分つ術を用い 窖(あなぐら)の中で修練する 静止し … 続きを読む
声の届かぬ部屋 II 頭蓋骨にしまった 罌粟(けし)のうすい花びら インクのかす … 続きを読む
〈美術衝動〉作品「10-44sec.―重力の発生」 この作品は、横浜市・Ban … 続きを読む
声の届かぬ部屋 III 青鹿毛の馬の背に 咒文の書かれた服を着て 闇に溶ける者が … 続きを読む
The impression, Scotland げんこの形をした山塊がどしんど … 続きを読む
声の届かぬ部屋で 包みを開封すると 押花の罌粟と 頭蓋骨の破片とが 雪のように … 続きを読む
〈美術衝動〉作品「Uncertainty Principle」1?4 M6号サ … 続きを読む
透明な卵 球体の中に世界が視える 老いた書誌学者の説によれば つがいの巨人族の … 続きを読む
頭蓋骨モデルから伝わるもの 闇の傾斜を、張りつめた糸が重なるように、かさかさに涸 … 続きを読む
古い砂 砂上の皺に数十億の蜜蜂が群っている 独り涸いた丘陵を駈けたのは瞬時の眩惑 … 続きを読む
飛翔する肉体(追悼) ――友であり、先輩である只石善士兄に捧ぐ アンダーグラ … 続きを読む
道 夕暮どきともなると、樹々のざわめきの奥に見え隠れする獣の対になった姿をみとめ … 続きを読む
〈美術衝動〉作品「CMB(Cosmic Microwave Background … 続きを読む
脣の赤い少女 睡りの前に少女のかかとを見る ガラスのように尖った神秘が眼の中を疾 … 続きを読む
〈美術衝動〉作品「反-次元のかたまり」1?5 ひもエネルギーが単純化された配置 … 続きを読む
魂の滋養 受話器から洩れる魂の誘惑 あくことない耽溺 室内の細い光が街路へ抜ける … 続きを読む
(林檎の研究を) 林檎の研究をしている友人に次のような話を聞いた 虫が涌くときに … 続きを読む
酔眼の微笑 眼の中に点々と注がれるものが純水であるとするならば、おまえたちの滂沱 … 続きを読む
エリニュスの裔 眷属の声 幽霊を見ていた。 肉体と魂の分離の術を試みていたとき … 続きを読む
「それでも一歩、ちかづく」の詩中句 ○炎る夏かさねて夜もあかさたな ○年の瀬のあ … 続きを読む
静謐のひととき 静かな睡り、ときとして凍るような夢 幼年期の薄墨色の景色から、渦 … 続きを読む
人類の鉱脈 ――薄倖の叔母・大迫静子に 最初に出会ったのは優しい眼をした狂女 … 続きを読む
人類の鉱脈 烟草のあるところにライターがあると決めてかかって、書物の蔭の烟草の箱 … 続きを読む
砌の下に ――澁澤龍彦氏に 石仏の首が 際限なく転ってゆく 賽の目も数えずと … 続きを読む
(光が折り畳まれ) 作品とスポットライトの間に ときどき空間が抉られたような わ … 続きを読む
滴 時計の針を 神話の錘りとする いまや聖霊たちの夜宴 星は 都市の遺構にまで … 続きを読む
人形たち 人形が数体 稽古用のバス・ドラムの腹に 沙の涸いた喉笛に 詩人の義眼の … 続きを読む
岸辺 忘却のアシは 切岸から突き出ている 聖なる声音をまねて 亡霊の名を呼ぶ 十 … 続きを読む
誘惑 (1) そもそもベルの鳴り方からして妙だった。低い微かな音でありながら、目 … 続きを読む
鏡子 鏡子が白樺林から出てきたときには、山の端に黄昏陽がかかっていた 隈笹がびっ … 続きを読む
水の眠り なでしこの散るホタル 器と器の重なり 骨のつながり かすれた色の花びら … 続きを読む
日録■2014/07/01-07/08 ■2014/07/01 2014/07/ … 続きを読む
日録■2014/07/16-07/27 ■2014/07/16 2014/07/ … 続きを読む
日録■2014/08/02-08/26 ■2014/08/02 2014/08/ … 続きを読む
最近の「おりおりのかけら」から ○炎る夏かさねて夜もあかさたな ○齢ほど妖しくな … 続きを読む
日録■2014/09/01-29 ■2014/09/01 2014/09/01 … 続きを読む
日録■2014/10/1-21 ■2014/10/1 8:20 【かけら】 in … 続きを読む
日録■2014/11/01-27 ■2014/11/01 23:39 【かけら】 … 続きを読む
さなぎ なつやすみのはじまった日の朝。わたしは食事をすませると二階へあがり。窓 … 続きを読む
銀色の蝶 しろい捕虫網とむしかごをもって、裏山の中腹にさしかかり。わたしはたち … 続きを読む
日録■2014/12/01-30 ■2014/12/01 21:45 【かけら】 … 続きを読む
最近の「おりおりのかけら」から ○ローズマリーの花が咲いてゐる ○セージはサルテ … 続きを読む
骨量をはかると 最初の航海が試される 父と母の骨片を わずかに器に移し 秘密の場 … 続きを読む
日録■2015/01/01-26 ■2015/01/01 20:22 【かけら】 … 続きを読む
日録■2015/2/24-25 ■2015/2/24 05:36 【かけら】 い … 続きを読む
日録■2015年03月02日-31日 【かけら】 体重がなかなか戻らないが、準備 … 続きを読む
しもばしら つめをあてているだけなのに。ビュランでけずる音がして。 くうかん … 続きを読む
日録■2015年04月08日-30日 ■2015/04/08 11:51 【かけ … 続きを読む
日録■2015年05月02日-31日 ■2015/05/02 01:27 【かけ … 続きを読む
日録■2015年06月01日-29日 ■2015/06/01 21:49 【かけ … 続きを読む
日録■2015年07月02日-11月26日 ■2015年07月02日 17:09 … 続きを読む
日録■2015年12月01日-31日 ■2015年12月01日 19:27 【か … 続きを読む
その場所は貧困層の集まるところではない。大きな道路の交叉するあたりである。 … 続きを読む
最近の「おりおりのかけら」から ○取り返しがつかないのだらうか、船出をしたときか … 続きを読む
層状宇宙 宇宙面を球体の表面になぞらえたとき、この球面が重層しているとすれば、こ … 続きを読む
【skr??l】(その1) 金石 稔 桃の実が枝になっている(走っている)遠景 … 続きを読む
ネットワークに囚われているかに見えても 頭の中に原稿用紙とペンがある 囚われない … 続きを読む
(序詩) 弱虫め、唸りを咽喉に押し込んで 砂まじりの風が 皺の深い顔を痛めつける … 続きを読む
はじめははじめられたときからぬかるんでいる げっけいは花るら神ばん のど藻との芯 … 続きを読む
【skr??l】(その2) 金石 稔 アルメルメリ 左右のひでり抜けて 仮名づか … 続きを読む
【skr??l】(その3) 金石 稔 昨日(平成26年3月1日) 純白の風に包ま … 続きを読む
重力のリバウンド 重力とは引き合う力ではなく、引き離す力ではないか。外へ向かう力 … 続きを読む
石の囁き 佐藤裕子 緑灰に斑が入った卵を呑むと目礼がひとつ走り野の始まり 日向 … 続きを読む
傍ら 佐藤裕子 誕生日右側に視野を分け与え眠る一人に一人が譲る羽根枕 影と光の … 続きを読む
風信 佐藤裕子 スポイト状の杖は衰えた巻き舌馴れぬ喧騒が心拍を上回る 蝋燭のシ … 続きを読む
日録■2016年02月02日-29日 ■2016年02月02日 02:00 【か … 続きを読む
紅筆 佐藤裕子 遠雷を避けても虫籠が顫える雄を食う雌を子が食うも言伝 静止した … 続きを読む
鳥は知らなくとも 佐藤裕子 高熱で拐かされ行方が知れぬ手足は順路を食み出し迷い子 … 続きを読む
七月の便り 佐藤裕子 イタドリの根元で風の切れ味を試すカメレオンの舌は蒼い 悪 … 続きを読む
最近の「おりおりのかけら」から ○一点に重なるとは包含と異なつてゐる ○重なるこ … 続きを読む
【skr??l】(その4) 金石 稔 夢の上を走る馬にゆだねた五体満願の 首すじ … 続きを読む
まだらなはなもよう せなかに花火を入れたり だれもいない部屋で ぶつりぶつりと … 続きを読む
【skr??l】(その5) 金石 稔 ただに 夢の遊びがことばになり 謎は奥の戸 … 続きを読む
【skr??l】(その6) 金石 稔 ここでは水さえ尖っている 一部分(やはり透 … 続きを読む
【skr??l】(その7) 金石 稔 陽の鳩尾に深く 暗くなるひかりの指をかけ … 続きを読む
日録■2016年03月01日-31日 ■2016年03月01日 12:42 【か … 続きを読む
【skr??l】(その8) 金石 稔 姿見に 素肩を見せ ことさらに《鏡》の海を … 続きを読む
帰還 I 佐藤裕子 正装に選ぶ冠は黄ばむ花から紙屑に変わり老いて太陽が躄る 浮腫 … 続きを読む
帰還 II 佐藤裕子 肉腫であろうと火脹れであろうと張り詰め受容ごと未生の時 星 … 続きを読む
「擬宇宙論」から(1) ○破片(フラグメント)を露はにし異なつた位相を暗示せよ … 続きを読む
帰還 III 佐藤裕子 撫子一輪を添え朝霧が取り出す楽器は目覚めを遅らせる曲線 … 続きを読む
帰還 IV 佐藤裕子 松林が一方向へ靡く海底から掬った漂砂に噛まれる船を曳く 手 … 続きを読む
【skr??l】(その9) 金石 稔 もたれて はじまる 雨だれ 青 海 光跡 … 続きを読む
【skr??l】(その10) 金石 稔 森あがれば 左手から抜けていく 69のこ … 続きを読む
【skr??l】(その11) 金石 稔 ふだらくにおちてみんかの あるまじろあり … 続きを読む
【skr??l】(その12) 金石 稔 それから眼球までの海域 白い風のような薔 … 続きを読む
【skr??l】(その13) 金石 稔 気配はあるがその てのものは なく 色の … 続きを読む
日録■2016年04月06日-30日 ■2016年4月6日 14:20 【かけら … 続きを読む
【skr??l】(その14) 金石 稔 某日某時刻 室内は水で満たされ そこに〈 … 続きを読む
【skr??l】(その15) 金石 稔 暗黒の空に架かる月の下に世界は幻惑の … 続きを読む
風が わたしの細胞の間を 風が吹く 細胞の分子構造の間を 風が吹きわたる 分子の … 続きを読む
日録■2016年05月05日-31日 ■2016年5月5日 02:1 【かけら】 … 続きを読む
1. 日本ファシズムの始動か? 7月31日、ア○首相が橋下某と会談しているとのこ … 続きを読む
バッドランドから 佐藤裕子 単調な声音は綴りに換え流れ出す頬骨の辺りで心許ない靄 … 続きを読む
砂の上の休日 佐藤裕子 油断は容赦しない囀り憧憬が裏返ると焦燥だけが目に付く … 続きを読む
女狐 佐藤裕子 襟元の斑が物憂いドレスは湿原で染めた裏絹夏毛を遊ばせ 獲物を分 … 続きを読む
十日特急112便 佐藤裕子 都市間バスの路面には発車時から並走する花がある白白と … 続きを読む
廃園 佐藤裕子 摩擦で剥がれ冷熱で砕けた月の箔が降り掛かり見る静けさ ラジオは … 続きを読む
籠の中 佐藤裕子 鋼造りの扉を指紋だらけにした指腹の躊躇いで口唇に怪我 明るむ … 続きを読む
⇒詩集『コスモロジー・デッサン』(紙田彰 2007年4月、全141頁、PDF 5 … 続きを読む
Universe Sheet 1, 2: 宇宙面1, 2, 2007.5, oi … 続きを読む
日録■2016年07月01日-31日 ■2016年07月01日 09:53 【か … 続きを読む
遠い処 佐藤裕子 北極点の上空から月の軌跡を避けながら糸を掛ける大蜘蛛 故郷を … 続きを読む
金婚式 佐藤裕子 潮騒から分かれたコーラスが天鵞絨を敷く緩い勾配を上り 庭先で … 続きを読む
迂回の渦 佐藤裕子 群れ成す木霊を引き連れて像は目覚める鍵盤を削る金属音 不滅 … 続きを読む
日誌 佐藤裕子 既視は何処から聖像から頭陀袋の口を締め邪気のない笑み 近付く距 … 続きを読む
天気雨 佐藤裕子 劇薬を盛り刀身をなぞるなぞった滑らかな飴色の指に触れ 平衡に … 続きを読む
日録■2016年08月01日-31日 ■2016年08月02日 00:05 【か … 続きを読む
空白 佐藤裕子 無人の通りの一日を午後三時で終いにする疲れ切った太陽 後ろは前 … 続きを読む
日録■2016年09月01日-30日 ■2016年09月01日 07:20 【か … 続きを読む
日録■2016年10月01日-12月31日 ■2016年10月01日 00:56 … 続きを読む
月蝕の姫 佐藤裕子 疫病に関する舞踏劇に於いて非常口消灯閉鎖全ての波遮断 烈日 … 続きを読む
小猫 佐藤裕子 土砂降りに震えていたのは皿の上の溶き焼き卵プチトマト 公園の休 … 続きを読む
また 佐藤裕子 あの場所からどのくらいここへ来るまでこんなに掛かった 蟻を払う … 続きを読む
桜 佐藤裕子 赤茶けた泥濘を突き生えて来る椅子には叔母が掛けていた 駄目その本 … 続きを読む
ものごころ 佐藤裕子 動揺を露にすることや感情を口に出すことは見苦しいもの 微 … 続きを読む
宝石箱 佐藤裕子 喉も嗄れた迦陵頻伽貝殻細工の比翼鳥彫金のマーガレット 帯留に … 続きを読む
いつかここに 佐藤裕子 訝しそうな顔付きで辺りを見回す自問に応じる寂しい笑い … 続きを読む
絵図阿蘭陀船 佐藤裕子 画であれば欺く女達は呪縛であれ笑みの種類は幸福であれ … 続きを読む
クーラーボックス 佐藤裕子 家の前でサイレンが止まる水溜りを踏んだ泥だらけの長靴 … 続きを読む
ムーンライトピクニック 佐藤裕子 無人駅へ行ってはいけない発電所の空地には犬捕り … 続きを読む
平行空間 佐藤裕子 定住しないように傷付けないように細かい鑢を掛けた深爪 平日 … 続きを読む
アンテナ 佐藤裕子 背信ではなく前進迷いは裏切り命取り絶望に手を貸す怠惰 訳知 … 続きを読む
十六夜 佐藤裕子 見納めになる岬の塔も鏡の水場も初めて眺めたものばかり 他人の … 続きを読む
ゆくりなく 佐藤裕子 古い行李で棘を刺す四季の半襟帯締め端切れで拵えた巾着 鎖 … 続きを読む
ティールームで 佐藤裕子 根の息は繊細で聡い否定すれば罰を受ける身に付けた心得 … 続きを読む
不眠の森――「dance obscura(仮)」の一章に用意された散文詩 その … 続きを読む
トロイメライジギタリスプラシーボ 佐藤裕子 冬眠する娘たちが鼻歌を奏でながら不調 … 続きを読む
棘の海――「dance obscura(仮)」の一章に用意された散文詩 わたし … 続きを読む
たしかに生命は自己複製、自己増殖が可能な有機的生物を対象にしたもののように見え … 続きを読む
もうひとつの夢から逃れようというのか、だれのしわざか、肩先から吐息がふっとこぼ … 続きを読む
素粒子が磁気嵐の中で散乱していく。存在はスライスされていく。反粒子と反存在が散 … 続きを読む
――層状宇宙。 宇宙面を球体の表面になぞらえたとき、この球面が重層しているとす … 続きを読む
ドーパミン系とセロトニン系の機能調節が不順なのだろうか。順調にいっていれば、統 … 続きを読む
病棟にいたときに、あたしは、未来とも過去とも、あるいは別の次元、別のあたしの人 … 続きを読む
世界が個人的に分割されていくとはどういうことなのか。現実、宇宙、あるいは次元と … 続きを読む
闘病の話はやめよう 最後の苦しさと悲しさはかぎりがないから ぼくには 君との47 … 続きを読む
最初の電話は、早朝だった。明らかにパニック状態の若い女の声だ。何の電話だ、危険 … 続きを読む
私は先日、「私と妻の長い闘病の暮らしが思い出されることにいたたまれなかったのだ … 続きを読む
夢。 その夜、病室のカーテンに幼児の姿をした天使が数体浮かび上がっていた。 翌日 … 続きを読む
一 しかし、これらは文明と深く関係している。幽霊のことだ。 またこれは貨幣概念 … 続きを読む
ニ
重なった記憶はあまりに乾涸びて、欲望に溢されるかどうか。
ああ。夢の中でさえ、俗事に囚われてしまった。覚醒した状態で見ているはずなのに。
こんな明確なのは初めてだ。
あ、この話を鏡子と電話アプリでトークをしていると、光の玉が左目の端に顔を出した。
あのころから、わたしは心からテロリストになることを夢見ていた。
こんな当たり障りのない告白
もっとも小さなものこそ世界の入り口だとささやくと、瞳を光のかたまりにして、きみはぼくの眼の中に宿り始めた。そうだったね。
現実にないものが小さないくつかの光になって、目のまわりを三十分くらい回っていた。
シャボン玉のような泡が眼の端からこぼれて、金色の球体となって浮かぶ。
すごい! その数とその不規則性が凄
いのだ。
そうなんだね。お母さん、お父さんの側にいるよってことだね。 続きを読む
おはよう!
お母さんが亡くなってしばらくして、わたしの誕生日にわたしも同じもの見たよ。おかあさんだね。
朝から、現実にありえない物質の意志と光が生きているんだ。
私は、そのようなあの世があると思う、しかない。
覚醒した状態で見ているからね。
こんな、明確なのは初め 続きを読む
Invisible 1 私は私の属しているものを知ることはできない。また、私 … 続きを読む
Invisible 2
来たるべきものはたしかに「部分」のうちにあるのだろうし、あなたはその来たるべきものに違いない。しかし、来たるべきものは来ることはないし、いつも私の外側にあるものだ。
また、それは無垢というものと関係があるのだろうか。私が無垢でなければあなたが無垢であろうし、あなたが無垢でなければ私が無垢であるということなのか。そもそも無垢であるということは許されざるものなのか。そして、そのことが侵襲される理由であるのか。それはこちらとあちら、私とあなたがひとつになることを拒むもの。
続きを読む
Invisible 3
このことは次のような問いかけでも同じである。「私にはあなたが見えるのか?」「あなたには私が見えるのか?」私はあらゆる場合においてあなたを見ることはできないし、あなたは私を見ることはできない。
では、私はあなたに問いかけることは可能なのだろうか。また、私はあなたに問いかけずに私としてありつづけることが可能なのだろうか。もっとはっきり述べるなら、私が私に問いかけるということはありえないし、それは不能な事象なのだから、あなたに問いかけることが不可能なら私は絶対の沈黙を余儀なくされる、私のあらゆる問いかけが存在しなくなる。
…
(見えざるもの)
続きを読む
microtubule 1 あなたは私に属しているのか? 私がそのような疑問 … 続きを読む
microtubule 2 Aは「私自身にとっては、肉体の欠落感というものは … 続きを読む
pain speed 私にとって最も遠いところから、その痛みは伝わってきたの … 続きを読む
breath melts 1 ――わたしが囚われているのではないことを、あなた … 続きを読む
breath melts 2 私は私の軟らかい部位に温かな吐息を感ずることで … 続きを読む
darkness 1
それは、ある青みを帯びた灰色の夕刻。その灰色の濃霧の向こうに薄黄色の光芒が垣間見えるが、こちらの側は絶望の濃紺の帳に蔽われているだけだ。さらに時間はくつがえり、かすかな光も忘れ去られていくに違いない。
私の底部の秘められた闇、稲光がたえず閃くように、抑えきれない衝動的な葛藤がつらぬく
続きを読む
darkness 2
知りえぬということの罪障、根深い疑い、想起するにいたらぬための焦燥。つまり、古いもの、気の遠くなるような底部に、そもそもから用意されているはずの空虚というイメージに起因しているもの。だが、たしかに私自身がその意味するところの真実とその正体を知ることは不可能なのだ。
続きを読む
internal trees 1
灰色の夕暮れの第二景。ふるえる心臓。このとき、つきぬけるような戦慄を、私はたしかに感じていた。
だが、それは実現不能な範疇にある行為なのである。自らを放棄することで生起する衝動、自らを拒否することによってのみ可能な敵意、自らを犠牲的につらぬくつらなり全体の無化への企み、それはあまりにも無意味な行為の突出であるからだ。それゆえ、すでに行為ではなく、切り離された行為の断片なのである。
続きを読む
internal trees 2
世界は外についても、内についても、何も知ることはできない。世界は時間と空間の幾何学だから、時間の階層にしても同じことである。過去の時間も未来の時間についてもほんとうのことは知ることはできないし、現在についても知っていることなどなにもないのかもしれない。生きているというのに、存在しているというのに、何も知ることのできないこの不条理。物理的宇宙は知性において、私を抑圧するものなのだ。 続きを読む
internal trees 3
私は救われることはない。彼もまた救われることはありえない。だが、何から救われるというのか、何が救うというのか。 続きを読む
flat living 1
地表すれすれで棲息しているのは私ばかりではない。蛇のように低い吐息を這わせているおまえたち、闇の匂いを蓄積させた路地の、地べたの種族――。
続きを読む
flat living 2
おまえたちは私を呪縛する。しかし、私はその呪縛が私に属しているのか、私を属しているものに関係しているのかを知る術がない。懐かしい匂い、体の奥が引きずられるようないとおしさ、脂にまみれた感触、体をくるむ体毛の記憶、何も考えることのない安逸さ、身をゆだねることの持続――。
続きを読む
flat living 3
支配するものを受け入れることは許されない。屈服することは許されない。私はそのことを忘れているわけではない。権力は何にもまして狡猾なのだ。私を招き入れて抱き寄せる。そして骨抜きにして暗い夜に放り出す。重い鎖を首に巻きつけ、足枷さえも括りつけて。さらには、血のつながりをつくることであまたの奴隷を生み出すのだ。
続きを読む
blood wedding 1
地面を引きずって徘徊するその意識は、決して地面に引きずられてはいないのだと叫ぶ。だが、天井からは継母の祝福されざる黒い血が滴り、屋根裏部屋の床一面には重力の破産を示す熔解した天体の落下の痕跡が見られる。痕跡は鉱物の形をとるのか、植物の姿となるのか、あるいは生々しい肉そのもの……。すでにこの世を後にした意識は、物質と物質との関係は、意識と物質、意識と意識の関係でもあるのだと言い残していた。その意識が向かったのは、向こうから押し寄せてくるものがとうてい看過することのできない反撥と激突とでもいうべき鋭い亀裂。
続きを読む
blood wedding 2
――まさに〈私〉が息を終えようとしているその刹那に、〈私〉を唆して飛び立たせようとするものがいるのだ。〈私〉は羽撃くものではないし、翼、鰭、跳躍に適う強い脚をもつものでもない。天使のように無残な光輪も、醜く硬直した幼児的な微笑も持たない。ただ、たしかに深い憎悪と鋭い敵意を抱きながら囚われつづけている、まさにその接触面にいるのである。〈私〉を解放しようするものが現れたとしても、〈私〉はその欺瞞と悪意を見破り、何ものに対しても完全な侮蔑と敵意を失うことはないだろう。〈私〉はあなたに対してさえも、またこうした自分自身の重複せざるをえない意識の連鎖に対してさえも、〈私〉を囚えているものに対する反抗と同質の〈反抗への意志〉を欠かすことはないだろう。
続きを読む
all gravity 1
皮膜などはたしてあるのか。BはB´に対して方向性を持っていると仮定すべきだ。なぜならBとB´には互いに異なった磁力が存在しているからだ。BとB´の引力と斥力の混沌は極大に達しているかもしれない。そうだとすると、それは何に起因しているのか。
続きを読む
all gravity 2
皮膜は確かにあるのだ。BにおいてB´は隔てられたものだ。重力と磁力が溶融しているような状態ではすべてが見えなくなってしまうように、皮膜のあちらとこちらの磁場がそれぞれに高温にさらされているのかもしれない。その安定しない状態にあることで、あらゆる事象との結合が容易になっているのだ――あるいは散乱現象。Bにとっては皮膜が熱によって混濁すればするほど、内部に押し込められることからいっそう離れた場所にいることになるのだから。
続きを読む
missing acts
必要なのは破裂することばなのだ。地核での眠りから地表に上り、地面を伝って中足骨からいくつもの関節を跳び越え、脊椎から頚椎、頭骨へ、さらに骨格にまとわりつくあまたの血管を辿り、太い大動脈を引き裂いて、脳漿を膨れ上がらせ、ついにすべてを粉々にして、破裂すること。寝静まって、だれにも見つけられない真夜中のいたるところで、一瞬の、激しいひきつりが発現する。それらを起点にしていくつもの痙攣が波動となって打ち続き、その長い長い苦痛こそがことばのprimary tumor。粉砕された輝く無数の細胞の切片を巻き込み、熱く滾る血液、脳みそ、肉片の飛び散る渦、気化する状態のタイフーン。なによりも切実な痛みの群体! 続きを読む
missing acts 2
その部分は遊離しているのではなく、無知であるために包括的に独立しているのかもしれない。それは知的な認識という回路を必要とせずに、たんに気づかないでいるというだけ。気づかないふりをしているということとは違うのだが。あるいは純然として気づかないということ。だから、君が誰で、そのときどこにいたのかと問うたところで、その質問ははぐらかされ、ただ吸引されて、反問されることはない。無視されているのではなく、空っぽの向こうに吸収されつづけていくのである。
続きを読む
narrative of revenant 1
その形象が訪れたのはそのときだった。音もなく開く扉。爛々と光る眼球の気配。薄汚れた長い布を肩からすっぽりまとった何ものかが暗い空間に漂っている。
続きを読む
narrative of revenant 2
どれほどの長い時間が経過していたのだろう。ほんとうはわずか寸秒のことだったのかもしれない。浮游する顔は初めから色彩を失っていたが、首だけになると、褪色した薄い皮膚はみるみる涸び、ついにはかさかさになって剥落していくのである。鼻梁や耳朶もその形を崩し、軟骨がこぼれ落ちる砂のようにさらさら音をたてて空中に四散していく。ただひとつその姿をとどめているのは、剥き出しになった裸の眼球である。網目状の毛細血管に絡みつかれ、燠火や鬼火を思わせる血の塊となって膨んでは萎む眼球が、闇の中で妖しく炯っていた。
続きを読む
●narrative of revenant 3
――おれは頭蓋骨だけで生き永らえているのだ。おれの輪廻転生はこの頭蓋骨に凝結し、おれの呪いも、おれの残虐無比も、ここにきわまっているのだ。
続きを読む
fluctuating fabric 1
それは、空虚という実体を内包したものなのかしら? 意識が物質過程に関与するということは、そのような見方が必要なのではないか、そしてそれはすでにそれ自体がエネルギーでなければならないとも考えられるわ。
続きを読む
fluctuating fabric 2
嬰児というのが妥当かどうかはわからないけれど、声の主が操っていた塊は形の定まらない筆記具とでもいったもので、始まりは回転体であるけれど、振り子のように円錐状に振り続けると、中心部からさまざまの色光が長い線分となって発するというものだった。そして、その糸状の光つまり網の目は時間と空間と重力のそれぞれの発生点らしく、それらの交点からさらにけばだったゼンマイのようなヒモ空間をゆらゆらとのばしていくように見えた。
続きを読む
grillo 1
嬰児はすでに幼児となって、ひとつの形を表しているのかもしれない。そのグリロという名の器具は光の線分をまとめて冠状波紋を撥ね上げ、その尖端を結びつける糊のように粘着的な接合を不規則に続けていく。それらの接合箇所はとげとげしい光を帯び、ギザギザの閃輝暗点のカーブをつくり、幼児をその奥に囲い込んでいる。光はグリロの筆先になっているのだ。幼児は井戸の中の意識の鏡体とでもいいえよう。閃輝暗点を生み出した脳内中枢の血管の瞬間的な収縮が、血流を一時的に変化させる。そのときに意識の鏡体となり、絶対反射の球面となるのだ。
続きを読む
grillo 2
ここでは意識は物質であるのか、そうでないのかを考えているのだが、物質であることと物質でないことにどのような境界をもたせられるのだろう。境界がないか、あまりに詳細化されて境界というには困難な状態であるならば、それは物質とはいえない力学、つまり量子的な光子間におけるある種の重力場といえるのかもしれない。境界自体が空間状態であるとか、境界自体が重力状態であるというような問題である。
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light cage
それにしても、クオリアは身体の全体的な認識領域なのだろうか。それも、単一の。それこそ、質の異なった、サイズの違った、別の領域を複数個持つと考えられないだろうか。そして、それぞれの世界の関係は矛盾に充ちたものであると。
続きを読む
fascism without the summit
つまり、システムレベルではこの内部にある限り自己なのである。所有を知らない単純集団は細胞の組織構成と同一の結合関係を持つといえる。所有は共有であって、私有の概念はない。いや、所有の概念がないともいいうる。集団的。あるいは階層的。または幻想的統合システム。
続きを読む
bourbon cask
――わたしは何について考えたらいいのかしら。何かを愛しているという錯覚、それとも憎しみについての物語? つまり、肉体の猥雑さをいとおしむべきなのか、身体機構のヒエラルキーに反抗すべきなのかしら。それとも、わたしはわたしから見ることのできないからだの外側の世界、からだがいくつも重なっている世界を愛しているのかしら、許せないでいるのかしら。無限に重なりつづける宇宙のからだ、わたしの性器が受け入れられないもの。
続きを読む
spinning sea 1
わたしがその兆候に気づいたのは、東南アジアの古い都市の旅から帰り着いてすぐのことだった。眠りから目覚めると、後頭部に何かしらの違和感を感じたのだ。簡単な打撲だと思ったのだけれど、嫌な気がしたのも確かだった。内部に向かった棘、触るとぐにゃりとしていて。
続きを読む
spinning sea 2
――うわーっ、なんだ、痛いじゃないのぉ。だれか助けて! 嘘ね、医者はうそつき、目が回るくらい痛いのよ。萎んだ体が力なく緩んで、頼りなく覚醒を訴えてつづけているのに。
続きを読む
sleepless forest 1 その森に迷い込んだときに、ある種の体系に毒された執拗な夢が送られてきた。それは、攻撃といってもいいかもしれない。その夢は、たしかに脳髄と神経システムの根幹を支配するDNA生命体がつくりだしたものである。 続きを読む
sleepless forest 2
取りつかれた細胞の戦闘は、無尽蔵の死体を作っていくのではなく、相手の細胞膜から攻撃物質を侵入させ、核にある標的物質を変化させて、それを基点に相手を解体し、さらに細胞膜の外に漏出させ、血流やリンパ管の中に昇華させるのである。 続きを読む
sleepless forest 3
癌細胞「そもそも自分が質的に異なる生物なのか、あるいは分類学的に別種なのか、それともたんに異物なのか、侵入者なのか、どの立場から評価されて修復の対象になっているのだろうか」
続きを読む
sleepless forest 4
サディ現象「サイズの大きくなったマクロ的世界では空間認識、時間認識の巨大な組み合わせを抽象化することで、風変わりな作品行為として実在するのだろうか。しかし、素材それぞれの場所からはその大きさの世界の把握は不可能で、作品といわれるものの存在も無意味であり、実在してはいない。実在は経済だからだ」
続きを読む
life genes 1
神の秘密、Der Alte würfelt nicht(神は賽を振らない)
それとも、彼らは一擲乾坤、乾坤一擲に賭けたのだろうか。
私をこの深い闇に閉じ込める。あてどなくさまようヒッグスの暗闇に。だれが?
続きを読む
life genes 2
癌細胞はさらに続ける。
――自分は負のベクトルとされているが、それはあくまで生体の側からの見方なのではないか。〈がんという生体〉の側からは、生命活動というDNAシステムの構築性を否定し、宿主を無に帰するばかりか、自らをもって死の淵へダイビングする〈反生命活動〉という〈正方向性〉を有している。それならば。
続きを読む
life genes 3
昂揚し、陶酔しきった癌細胞。それにしても、いっさいの生命が装置として存在するとは……。身体という機構の内部にあるものを見よ。たしかに、肉体の細胞はその独自性と身体システム機構とに軋轢がある。細胞の個々の意識も身体システムと対峙している。しかし、ある塊となり部位を形成したとき、身体システムに圧倒的に支配されるに違いないのだ。だが、本当にそれだけか。 続きを読む
struggles 1
魂というものがあるとはどうしても思えないのだが、その形態ということなら思い描くにやぶさかではない。なぜなら、それは受胎空間のように見えるからだ。
続きを読む
struggles 2
しかし、なぜ、彼らはこの惑星を超えることができないのだろう。あるいは超える能力に欠けているのだろうか。それが生物というものの限界構造なのかもしれない。外宇宙に飛び出せば、超高温と超低温のケルビンの熱温度の世界にさらされるだろうし、平坦かつ永遠に存在する時間と空間の、普遍的であることによって何もないというような場所に生物が棲息なぞできるはずがないからだ。 続きを読む
struggles 3 しかし、細胞の内部にあるDNAは私に何も語りかけては … 続きを読む
far away 1
たしかに生命は自己複製、自己増殖が可能な有機的生物を対象にしたもののように見える。そして、有機的な生物は脳神経系統を基軸に、化学反応による電磁気の信号によって情報交換がなされている。また、細胞間、遺伝子間で未知の通信がなされているかもしれない。それらの情報は、生理、感情、感覚、知覚などに分類され、脳内レベルで意識として統合されているのだろうか。 続きを読む
far away 2
――問題は意識であるのかもしれない。
私は、肉体と身体に対して、意識が自立的な存在かどうかに疑問を抱いている。なぜなら、意識も肉体がなければ存在できないからだ。意識も脳神経機構がなければ現れることは不可能だ。だとすれば、結局は肉体と身体に属しているものなのではないか。 続きを読む
continuation of dreams 1
もうひとつの夢から逃れようというのか、だれのしわざか、肩先から吐息がふっとこぼれ落ちてくる。直観が破片のように舞い降りて、あるいは霜柱のように湧いてくる。
続きを読む
continuation of dreams 2
無間の底なしの暗闇からその濃淡の樹脈は重なり続けているとはいえ、それと比較するかのように、意識の表層などという明晰かつ捏造された精神の歴史など、本当にあるのだろうか。 続きを読む
continuation of dreams 3
はたして意識は、その生成の原因とは別に、生命体にしか存在しないのだろうか。あるいは、意識を生命体と区別することは可能なのか? 続きを読む
continuation of dreams 4
基底意識は表層に対して基底層を構成していると考えるとすると、深層意識とか深層というものはただ暗部につきまとう幻想性なのかもしれない。 続きを読む
tubulin 1
素粒子が磁気嵐の中で散乱していく。存在はスライスされていく。反粒子と反存在が散乱しながら充満する。エントロピーとはこれら双方向性についてのそれぞれの見方ともいえる。見方自体が宇宙の内容物を満たしているのだ。
続きを読む
tubulin 2
――ある思考実験。
チューブリン(微小管細胞)の次元イメージ。(次元f(x))、回路の切断面。
マイクロチューブルの次元イメージf(x)をそれぞれの回路の切断面とする。チューブルは管であるから、穴という内部の範囲がある。
ニューロンのチューブリンから次元同士の接地面イメージ。
続きを読む
conflicting similarities
――層状宇宙。
宇宙面を球体の表面になぞらえたとき、この球面が重層しているとすれば、重なるような形で膜状宇宙が複数、波のようにゆらめいて存在しているというイメージが浮かぶ。物質の発生が、真空のゆらぎから物質・反物質の量子過程を経るとするなら、この高エネルギー状態の真空がその前提にあると考えることは無理なことではない。
続きを読む
nightmare I
〈reminiscence〉
私はいつの間にここに佇んでいるのだろう。それにしても、この場所とはどこか? 特定できない場所、特定できない状態。私はひとつの仕事を終えて、一挙に老衰に襲われているのだろうか。
続きを読む
nightmare I
〈inflexibility〉
ここはすでに現実と思われるところではない。。しかし、それは非現実ということでもない。視点の定まらないところに、あるべきではない空白が広がっているのかもしれない。 続きを読む
nightmare I
〈advertising〉
空に突き出たスカイスクレイパーをつなぐ槍型モノレール、大気圏外までカプセル席のまま昇降するエレベーター。色とりどりの透明フードを反射させながら、人々は各階のテラスに張り出された乗降口から高層ビルの中に吸い込まれる。 続きを読む
nightmare I
〈skeleton〉
富裕な階層、特権的な人種、マジョリティの中の数少ない上位者、悪を悪とも恐れぬセレブリティ。発現する万物を吸い取る暗い眼窩、その奥で光る瞳の数だけの欲望。出現するものすべてに価値と等級を与える者たち。汝らの人生とは経済だけだ。その魔手が川底を浚いつづけて。
続きを読む
nightmare I
〈immersion〉
ドーパミン系とセロトニン系の機能調節が不順なのだろうか。順調にいっていれば、統合能力が低下するはずはない。だが、私の世界観はますます傾斜していく。薬物からの離脱など、許されるはずもない。私はますます依存を深めるのだろう。私ははとどまる者。狭い部屋でうずくまり、動くことを自らに禁じた精神。分裂することを禁じた人格。私は環境に捕縛されている、人間の皮に押し込められている。細胞膜に閉じ込められている。人間というもの、その外側の世界という妄想を構築してしまった、静止した精神なのだ。
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nightmare II
〈arabian night〉1
あたしは長い睡眠障害から薬物への傾斜を深めていく。いつのころからか、体がだるく感じはじめ、次第に関節のいくつかが軋み、そのうちに頭の内側と外が乖離していく感覚が訪れていた。体の表面からは鬱状態が蒸気のように発散し、頭の内部では分断された夢に従って脳組織の部分部分に妄想状態の塊がどろりと湧き出していた。いつもベッドに忍び寄る恋人からは、ブルーな女だと言われていたような気がする。
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nightmare II
〈arabian night〉2
その日は昼前から朦朧としたまま、半日が過ぎた。migraine auraのギラギラした太陽は視野から薄れ、片頭痛と脳血管のバイブレーションが続く。気がつくと、巣穴から弾き出され、都心部の雑踏へと吸い込まれていた。
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nightmare II
〈stigma〉
私は、不定形なビル群の個々の壁面ディスプレイに表示される巨大な顔たちが、ただひとりの、無彩色の暗黒の布を巻きつけた女を監視しているのに気づいていた。しかし、単つ眼の海鼠のような女は、痛めつけられた腔腸類が、黒い皮の内部でシェークされて分解されるように、ぐにゃぐにゃと形を変え、さらに外皮さえ溶け出して、ついには細胞それぞれに存在する核が無数の眼となって、巨大広告の幻影たちの全体と細部を監視する。 続きを読む
nightmare II
〈hallucination〉
病棟にいたときに、あたしは、未来とも過去とも、あるいは別の次元、別のあたしの人生を見ていたことがある。
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nightmare II
〈dismantle〉
「あたしが病院送りになった原因を作ったあの兄弟は右翼に違いないから、あたしが国家を愛していないばかりか、国家を害していると決めつけていたのよ」 続きを読む
連載【第064回】: 散文詩による小説: Dance Obscura: nightmare II: 〈negative symptom〉1
nightmare II
〈negative symptom〉1
何日も何日も寝てばかりいる。私はまるで植物だ。ここからはどこにも出られない。頬がこけ、青白い顔にどんよりした眼球が落ち込んでしまって。それでも、ただ動かないでいるのが、穏やかな暮らしなのかもしれない。多少の感情の起伏は生ずる。バイタルサインは平板化していき、思考の力が衰退しても気にならないほどには。
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nightmare II
〈negative symptom〉2
暴力と悪徳にまみれた略奪者と閨閥と豪族がシードとなり、原始宗教というペテンと祭事と搾取が支配の礎となる。富や貴賤や貨幣が生まれたときから詐欺師が横行し、法や国がでっちあげられる。国家とは幸福な家だとされるが、それはでたらめだ。国家はあらゆるものを奪うためにあるのだ。
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nightmare II
〈negative symptom〉3
幼児化とエセ芸術はグローバルな経済現象だ。金を増やすことにしか頭の回らない連中は、脳味噌の使い途を忘れてしまったのだ。だから、単純な刺激とあまりに単純な欲望に取り込まれる。同時代に生きているほとんどの人類のことが見えずに、忘却を決め込んでいる。模造品や玩具、美術館や銀行ごっこ、オリンピックやSMごっこ。
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nightmare III
magnetic material〉1
空中を高速度の地下鉄が走っている。高層ビルをつないで銀色に光る電車が建物内のプラットホームで停まると、乗客はあわただしく吐き出される。監視カメラのアングルがかすかに変わり、レンズが光った。私は顔の角度を変える。
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nightmare III
〈magnetic material〉2
あやうい吹き溜まりのような商圏を抜けて周りを見ると、その辺りは丘の中腹で、古い小型店舗や建物が密集し、さらに進むと昔ながらの下町を抜けて、塀のある高級住宅街が現れる。そこに至るまでに、細い路地や方向の定まらない曲がり角を何遍も通ってきていた。次第に、私は電柱やブロック塀に貼り付けてある住所表示が、よくわからなくなっている。
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nightmare III
〈toenail claw〉
おまえを逮捕する。よけいなことを考えているから、おれたちが出張る羽目になったのだ。公安とは別に、非公然の秘密組織があるなどとは知らないだろう。おれたちは秘密保護法と共謀罪法によって、国家保安本部4局に属する、国家の敵を対象にした防諜、摘発組織なのだ。
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nightmare III
〈multiverse〉
世界が個人的に分割されていくとはどういうことなのか。現実、宇宙、あるいは次元とは、〈見ること〉が経験することであるなら、その事象を〈見ること〉自体が判断したり、選択することで多宇宙が生み出されていく。粒子が自己という鏡を見ることで反粒子として分割させるように、多宇宙をすべからく経験していくのだ。そして、
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nightmare III
〈ant’s nest〉
蟻の巣の屋敷から、私は目隠しと猿轡をされて、どこかの病院に連れて来られた。箱詰めにされて、黒塗りの霊柩車のような車に乗せられ、そこは古い運河べりの公立の総合病院であるようだった。病院自体は新しく建て替えられた近代的な建物だが、空気全体が古く厳めしく、どんよりと濁っていた。 続きを読む
nightmare III
〈transformation〉
たしかに微熱を帯びていて、心理状態がすこぶる悪化している。そしてその状態が全身の関節から神経を伝って、ネットワークを作っていくのだろう。神経システムに攻撃を受けているのだ。そのことに、もはや抗えないことが腹立たしいのかもしれない。呼吸を繰り返せば腫れた扁桃腺が引き攣るように重く反応するし、何よりも末端の神経が軋むと瞬時に伝播する疼痛が思考を裁断するのである。 続きを読む
nightmare III
〈peninsula〉
そのときの私は、敗戦直後の関東軍にいて、通化事件に遭遇していた。この虐殺事件は、関東軍、国民党軍、中国共産党軍、朝鮮人民義勇軍の引き起こした謀略戦であった。それぞれが裏工作でつながり、武器を持たない日本の哀れな居留民や無力な兵卒たちを欺き、利用して、四つの勢力の利益分配を画策したものである。 続きを読む
nightmare III
〈chrysanthèmes〉
それはDNA生命系の夢、その破片。光る砂のようにさらさらと舞い落ちて、その侵襲がやむことはない。永遠に生きられないのだから、生きているものを貪り尽くそうとする。か弱いのだ。そのか弱い意識は、細胞と魂を飽食し、魔物のような国家を通じてファシズムの夢を見ているのだ。孤立した一匹だけが支配する世界のために。その生命系は配下に、どんなに膨大な数の自己複製の個体があっても、ただ収斂され続ける一個の生命体でしかない。 続きを読む
nightmare III
〈ritual〉
そのような土地で菊の花の祭りが始まっている。fascisme de chrysanthèmes dans fleur pleine(満開の菊のファシズム)が押し寄せる。満開の花。黄色い花びら。山や丘の彼方から海が押し寄せるように、大量の菊の花びらがやって来る。花の祭り、死の祭り。大地震の後の大津波。すべてを根こそぎにして菊の花びらが呑み込んでしまう。
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nightmare IV
〈sea crime〉
――わたしは助かることのできないところに来てしまった。いろいろな新薬を使ってみたけれど、どれも効果は出なかった。辛うじて通院しながら治療は続けているけれど、医師たちの表情は冷めていった。匙を投げるように、医師はわたしを次の病院に送り込んだ。 続きを読む
nightmare IV
〈fusillade〉
肺の縦隔腫瘍の増大に対して、呼吸器科では放射線科の医師たちに、照射治療を委託した。あなたは白い胸にマジックインキで何箇所も目印を書き込まれていた。美しい乳房が無惨にも汚されていく。 続きを読む
nightmare IV
〈mediastinal〉
最初の電話は、早朝だった。明らかにパニック状態の若い女の声だ。何の電話だ、危険な状態なのか。当直医と話してください、とにかく来てください。危篤の召集なのか、はっきりしろ! 女の声は、ドクターに聞いてくださいで終始する。病院はリスク回避のために即答を避けているのだ。ドクターが電話に出ることもなかった。
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dance obscura 0
私たちは「肉の広場」ともいえるdance obscuraに集まっていた。私たちはそれぞれ。それぞれの部位であり、細胞、意識。独立したそれぞれ。孤立したそれぞれ。
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dance obscura 1
〈dance〉1
あれは母さんだ、わたしのお母さん。子供たちはざわめく。子供たちは、淡い光の波に漂うごとく、泳ぐように、光に溶け込んでいるあなたの薄い色のからだを懐かしむ。 続きを読む
dance obscura 1
〈dance〉2
私たちは考える。あらゆるものがただ一点に重なっている。空間も時間も、さらにはすべての次元も、あるかないかを問わずに、ただ一点に重なっている。 続きを読む
dance obscura 2
〈cogitation〉
思いとは忘れ去られていくのだろうか。それとも深く根を張ってまた花を咲かせるのだろうか。私は、そのいずれも正しいし、両者とも誤っていると感じている。なぜなら、それは形を保っているからだ。 続きを読む
dance obscura 3
〈revelation〉1
私たちは、それぞれペアになっている若い男女の傍らに佇む。彼らは私たちの父と母となるはずの生命の樹木。そこにそれとしてある、ただそれだけだ。粒子と反粒子とは力の均衡、力の衝突の現場なのだ。
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dance obscura 3
〈revelation〉2
密林が切り拓かれ、叢も刈りそろえられた土地の中央は、平坦な広場となっていた。その中に、校舎か工場のような建物が並び、白い光の下で灰色の区画を保っていた。誰かが静かに声をあげた。
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dance obscura 4
〈astral body〉
素敵ね、あなたの歌声は。隣のベッドで死期の間近な同病者に優しく声をかける。自分はすでに喉を痛めて掠れた声なので、そう書いた手紙を渡してくれと。私は翌日に死期を迎えるあなたの優しい最後のメッセージを、隣人に手渡すことになったが、よもや、あなたが翌日に命が絶えるなどとは思いもしなかった。
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dance obscura 5
〈expression〉
私は幼い少年になって、若い母親と父親のかたわらで、子供の姿になった他の乗客たちと同じに、昔のとても懐かしい気持ちに浸っていた。私の目の前に現れた新しい両親は、やさしく清々しい心と体で私を導いてくれる。 続きを読む